短編
□涙の訳は。
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「それはね、お前は....」
孝宏は
すべて言い終わる前に
俺に優しくキスをしてきた。
唇を離して、
俺は孝宏に尋ねた。
「俺は...なに???」
すると孝宏はクスッと笑って
「ふふっ、残念だけど
健一には教えてあげない」
「な、なんでだよっ」
「今からお楽しみの時間
だからね...」
そう言って俺をベッドに
優しく押し倒した。
「好きだよ...健一...」
孝宏は俺の耳元で
甘く、ゆっくりと、
呪文のように
その言葉を繰り返した。
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つぎのあさ。
「ん、んんー・・・・っ」
カーテンの隙間から漏れる
朝日が眩しくて、
俺は目を覚ました。
俺のすぐ隣では
まだ孝宏が甘い寝息を
たてていた。
「・・・夢じゃない、よな...」
小さく呟いてみた。
昨日の出来事が頭の中で
フラッシュバックする。
孝宏との甘い記憶。
孝宏の甘い声。
甘い痛み。
全てが.....本物。
俺が涙を溢した訳。
それは...
孝宏が愛しかったから。
孝宏がほしかったから。
だから...孝宏???
俺をずっと捕まえてて。
離れていかないで。
ずっと...そばにいて???
└あとがき