短編

□自転車@ワードリクエスト
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あーもう!!
なんやねんばかひろっ!!!


俺は苛立っていた。

仕事から帰ってきて、ソファにボフッと
倒れ込む。

モモとアイビーが心配そうに俺の元へ
駆けてくる。

「あー・・・心配してくれるん?」

俺は愛娘達を抱き締めて、目をぎゅっと
閉じた。


それはつい先週の話。

自転車といえば・・・と思って潤に話をした。


「なぁじゅんじゅん、ここら辺で
気持ちよく走れるようなとこあらへん?」

「走るって・・・自転車ですか?」

「そっ!!」

「そーですねぇ、◯◯の辺りの△△公園は
ちゃんと舗装されたサイクリングロードが
ありますよ」

「んー・・・あんま聞かへんとこやね」

「あ、なんなら一緒に行きます?」

「行く!!!」


俺は潤の好意に甘え、二人で
サイクリングに行くことになったのだが。



それが全ての発端だった。



しばらくしてラジオの収録で孝宏と久々に
会った。

俺は嬉しくて真っ先に声を掛けに行った。


「たかひろ!!!久々やね!!!」

「あぁ」

「元気にしとったか?」

「まぁそこそこ」

「仕事はどんな感じなん??」

「ボチボチ」

「・・・・・孝宏、怒ってる?」

「・・・・・・・・・・・・・。」


・・・・・・なんやねん、コイツ。

俺知らぬ間になんかアイツに嫌なこととか
したんかな?

考えてみても思い当たるような出来事は
ひとつもない。

そもそも会うのも久しいし、怒らせるようなことをする機会すら全くなかった訳で。


楽屋に不穏な空気が流れ始める。

俺だって何かした訳じゃないし、謝る理由も全くない。

お互い黙ってその場をやり過ごそうと
していた。


何分かすると、スタッフさんが
打ち合わせの開始時間を伝えに来た。

スタッフさんも俺達のいつもと違う空気を
察したのか、用件だけ伝えて早々に
出ていってしまった。


さらに気まずくなるだけの楽屋。

このままではいけない、と思って俺は勇気を振り絞った。

「あ、あのさ、俺孝宏になんかしたん?」

「・・・・別に」

「別に、ちゃうやろ!何エ◯カ様みたいに
気取ってんねん!!!」

「・・・・・・。」

「・・・・・・・・・・・・・俺、こんなん嫌や」

「・・・・だって、健一・・・・」


ガチャ。

「櫻井さん、鈴村さん!打ち合わ・・・せ・・・・
あの、お二人とも・・・?」

「あ、いえ・・・今行きます」

「あ、たかひろ・・・」

「行くぞ」


結局肝心なところで遮られてしまい、
理由が分からずモヤモヤとしたまま
打ち合わせを開始し、収録を始めた。


収録中は至って普通に接してくれる孝宏。

なんだか、泣きそうになる。


だがそこはグッと堪えて無事収録を
終わらせた。

だが孝宏は楽屋に戻ると手荷物を持って
すぐに次の仕事へ向かってしまった。

それを追うことも出来ずに、結局俺たちは
すれ違ったままだった。
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