うたプリ

□来栖薫の憂鬱
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薫side


「ご、ごめん。なんか僕の耳がおかしいみたい。幻聴が聞こえちゃってさ」

「だから、那月と付き合うことになった」


さっき翔ちゃんが言ったことと同じ言葉が聞こえた。
翔ちゃんが誰かと付き合うの?
なんで?
今まで変な虫が寄り付かないようにずっと翔ちゃんを守ってきたのに……
選りに選って那月さんと付き合うなんて……
確かに那月さんは昔から翔ちゃんのことをかわいいかわいいって言いながら抱きしめたりしていたけど、翔ちゃんは嫌がっていたからちゃんと見ていなかった。
まさか二人が相思相愛だったとは思わなかった。
翔ちゃんが僕のもとからいなくなってしまう。
そう考えると体から熱が急激に失われていく感覚がした。


「……デートはしないの?」

「で、デートって……一応、遊ぶ約束はしてる」


デートという単語に恥じらう翔ちゃんがかわいい。
だけど、今はそんな顔は見たくない。
僕以外の誰かのことを想って、そんな優しい顔しないでよ。


「それをデートっていうんだよ。それでいつ?」

「えっと、明日の10時に迎えに来る……」

「じゃあ朝ごはんは一緒に食べるよね?用意しておくね」

「サンキュ」

「翔ちゃんは明日に備えていろいろと準備しなきゃだもんね」

「う、うん」


翔ちゃんは嬉しいような恥ずかしいような表情を見せる。
なんでそんな顔するの?
僕と一緒にいるときにはしたことある?
僕はそんな顔知らない。
そんな顔をさせることが出来る那月さんが憎い。
翔ちゃんは僕のものなのに……


「明日が楽しみだね」

「?そう、だな」


翔ちゃんには悪いけど、明日のデート、邪魔させてもらうね。
きっと那月さんが好きだっていう勘違いをしてるだけなんだよね?
今から僕が目を覚まさせてあげるから。
待っててね、翔ちゃん。














次の日、僕はいつもより早く起きた。
理由は朝食を作るためだ。
翔ちゃんは自分が早く起きると二人分の朝食を作ってくれている。
今日はそれをされたら困るから早めに起きた。
翔ちゃんはまだ部屋から出てきていないから、きっと寝ている。


「さて、ご飯を作らないとね」


パンにマーガリンを塗ったものと何も塗っていないものをトースターで焼く。
何も塗ってない方には後でジャムを塗る。
後は簡単にスクランブルエッグでも作ろうかな?
これならこの薬も混ぜやすいしね。
出来上がった朝食を並べて翔ちゃんが来るのを待つ。


「あれ?薫が飯作ってくれたのか?」


いいタイミングで翔ちゃんは起きてきた。


「あ、翔ちゃんおはよう。昨日僕が作るって言ったじゃない」

「そうだっけか?」

「そうだよ。ほら、冷めないうちに食べなよ」

「いただきます」


翔ちゃんはおいしそうに僕が作った料理を全て平らげた。
その中に何が入っているとも知らずに。





















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