イナズマ

□夢の終わり、そしてはじまり
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夢を見た。

これは……俺達が小さい頃……?

でも怪我をしたのは、俺の方で……

痛くて痛くて……

だけど、怪我をしたのが俺で良かった。

だって、そうすれば、兄さんは……





ピピピピピ



「っ!」


目覚まし時計のアラームで目が覚めた。
ここは……


「俺の部屋……?」


目の前にはいつも通りの天井でそこが自分の部屋だと分かった。
ベットから体を起こすと寝巻が少し湿っていた。
それが気持ち悪くてすぐに布団から出た。


「あの夢は一体何だったんだ……」


起きてから思い返すと酷く朧げなものになっていた。
木から落ちた俺はそのまま足を怪我した。
兄さんは必死に俺の名前を呼んでいた。
その顔は泣きそうで、俺は心配させないように笑った。
でも、兄さんはもっと苦しそうに顔を歪めた。
俺は辛くて、足と同時に胸が痛くなった。
所詮は夢。
そう思えるのはずなのに……
胸と足が少し痛んだ気がした。









「兄さん、調子はどう?」

「京介、今日も来てくれたのか?」

「練習がいつもより早く終わったから」

「そんなこと言って、昨日もお見舞いに来てくれたじゃないか」

「そうだったっけ?」


今日も俺は兄さんのお見舞いのために病院へ行った。
昨日は本当に練習が早く終わったから病院行った。
今日は、夢のことが気になって仕方なかったから。
もやもやしたまま練習したところで迷惑かけるだけだし、練習を休んできた。


「忙しいなら来なくてもいいんだぞ?」

「兄さんは余計なこと考えなくてもいいよ。俺が来たいから来てるだけなんだから」

「ふふふ、そっか」

「うん」


何気ないただの話。
なのに兄さんは凄く楽しそうで、俺は静かに胸を撫で下ろした。
夢を見て不安になった。
兄さんは本当は俺を恨んでいるかもしれない、と。
俺の不注意で怪我なんてさせてしまって……
夢で怪我した俺が何を思っていたかなんて覚えてはいない。
だけど、兄さんの顔ははっきり覚えている。
あんなに悲しそうな、泣きそうな顔。
そんな顔をさせてしまった自分が嫌だった。
じゃあ、今は……?
今はそうじゃないっていい切れる保証がどこにある?
俺に気を遣って笑っているだけで、本当は誰もいないところで苦しんだり、泣いたりしているんじゃないか?
でも、兄さんにそんなことを聞く勇気なんてこれっぽっちもなかった。

















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