〜東方月魔爆〜
□第一章 広がる紅霧、それと…
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暗く冷たい地下、石造りの床が寒さを助長している。そこに有るのは一つの扉、光さえあれば黒光りするだろうそれも光無い地下では、黒く沈んだ壁でしかない。
「ねぇ…、お姉様。どうして私はここに居るの?」
少女の呟きは冷え切った室内の空気に呑まれて消える。扉の向こうの“お姉様”からの返事はない。
「お姉様…、私いい子でいたよ?何も壊してないし、一度も部屋を出なかったよ?」
少女が感じるのは背をつけた扉の冷たさ。
少女が感じるのは独り暗い部屋に取り残された孤独。
少女が感じるのは姉からの疎外。
「お姉様言ったよね?いい子にしたら遊んでくれるって、お外に出してくれるって。」
扉の向こう、姉からは返事どころか何の反応もない。もしかしたら本当に扉の向こうは無人で少女が独り言を言っていると思えるほどだ。
「…お姉様、私は何時までここに居ればいいの?何時までいい子でいたらいいの?」
―…ラン、もう少しだけよ。
初めて返された姉からの言葉はそれだけ。
「またそれ?もう少し、もう少しって。そう言われ続けて、もううんざりよ!私はもう今が朝なのか夜なのかすら分からない!」
―本当に…、もう少しだけだから。
「嘘つき!もう聞きたくない!そう言って、本当はお姉様は私を閉じ込めたいだけなんでしょ!」
―違うわ。今回は…
「嘘つき!もうどっかに行ってよ!」
―…また来るわ。その時には出してあげる。
「うるさい!早く居なくなれ!嘘つき!嘘つき!嘘つき…」
ゆっくりと足音が扉から遠ざかっていく。
それでも、少女の慟哭は止まなかった。