真理を追究する者
□いにしえの契約!不死を求める者!
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すべては、とある男の言葉から始まった。
「よろしければ、僕の追っている盗賊からクレアバイブルの写本を取り戻していただきたいと思いまして」
突如現れた男はそう言って、あたしたちにクレアバイブルの奪還を依頼してきた。
ちょうどあたしたちも、クレアバイブルの写本を求めていて。
なぜかは……その、あたしが欲しかったの!
で、盗賊をしらみつぶしに当たっていた時に、この依頼である。
これはやらなきゃ損ってもんでしょ!
ってわけで、この天才美少女魔導士リナ=インバースが、ちょちょいっとお宝を盗み出してやろうじゃないの!
……と、かっこつけようにも、今の状況じゃなかなかそうはいかない。
「もーっ、なんでこうなんのかなあ!」
ぼやきつつ盗賊のリーダーを追いかけるあたし。
作戦はこうだった。
セイルーン王国のお姫様であるアメリアを捕まえたふりをしてアジトに潜入。
アメリアが脱走騒ぎを起こしている間に、どさくさでクレアバイブルの写本をいただく。
で、潜入したはいいものの……どうやらバレていたらしい。
「せっかく立てた段取りがめちゃくちゃじゃないの!」
吹っ掛けてきた盗賊ABC……その他もろもろをてきとーに吹っ飛ばすと、リーダーの男は部下を置いてどこかにトンズラ。
ガウリイにザコを任せ、リーダーの男を追いかけている……という顛末である。
「いやあ、そうでもないですよ」
つい何分か前に聞いた声が、後ろから響いた。
振り返ると案の定、あたしたちに例の依頼をしてきた自称謎の神官(プリースト)……ゼロスがいた。
「一応僕の計画通りに進んでますから」
「僕の……って、ゼロス!ちょっと、これで計画通りってどういうことよ!」
彼は人のよさそうな笑みのまま、
「実は盗賊たちに写本を狙う連中が来ると密告したのは、僕だったりするんです」
ぼ……っ!
「僕――――っ!!?」
思わず立ち止まり睨むあたし。
せっかく立てた計画を、依頼した本人がぶち壊しにしたってわけ!?
そんな言葉を含んだ視線も、この男には全く効かないらしく、
「そんなことより、いよいよ写本のありかに到達ですよ」
にこやかなままあたしの横を通り過ぎ、一目散に隠し扉を開いて逃げる男を追いかける。
今すぐ締め上げたいのをグッと我慢し……あたしもそのあとに続く。
「ほぉらね?やっぱり人間、パニックになると必然的に自分の一番大切なものをとりに行くようです」
屋根裏に潜んだあたしとゼロス。
見下ろした先で、リーダーの男は何やら喚き散らしながら、クレアバイブルの写本と思しき紙束を回収している。
「だからわざと騒動を起こして本人にお宝のありかに案内させたの!?いけしゃあしゃあとあたしを利用して!」
「利用?」
ゼロスは暫しうーん……と顎に手を置き、
「――そうとも言いますね♪」
ごんっ!
怒鳴ろうと立ち上がり、天井に頭をぶつけるあたし。
こぉんの男は……っ!ホントにこんなとこじゃなきゃ張り倒してやんのにっ!
「でも、敵を欺くにはまず見方からと言いますし、ね」
「『ね』って、ごまかすなぁぁぁ!」
「さ、行きましょうか」
「人の話を聞かんかい!」
言いつつ振り返ったゼロスは……その笑顔をほんの少しだけ引っ込める。
つられて下を見たあたしは……思わず声を上げる。