真理を追究する者
□ドタバタの側で1
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「あ」
思わず声を上げたアメリア。
視線の先には――見覚えのある本が無造作に置かれていた。
どうしても寄りたいと立ち寄った町で。
ついに見つけた――銀貨一枚、食べ放題の店!
でもゼルに止められるわ怪しい謎の女に捕まるわ、そうこうしてるうちに食べそこなっちゃって。
まあ、今日はここで一泊するんだし、明日また食べたらいっか。
で、宿の温泉に入りに行ったところ――脱衣所で、あの本を見つけたのである。
湿気対策か、ご丁寧にビニールで包まれてはいるが。
「あ、ちょっとリナさん!」
アメリアの制止を聞かず、袋を開けて本を取り出した。
ずっしりと重い本……これを片手で持ち上げてるって、すごいわね。
それとも軽量化の術でも使ってるのかしら。
とりあえず本を開こうとページに手をかけて……。
「……んんっぐぐぐぐぐ……っ!」
いくら力をかけても開かない!
「も、もうやめませんかリナさん、人のものを勝手に見るのは……」
「何言ってんのよ、クレアバイブル探し回るやつが後生大事に抱えてる本なのよ?しかも見るだけ見てクレアバイブルを捨てていくなんて、どっかに、それこそこの本に書き写してるに決まってるわ」
一体いくつの写本を見てきたのかは知らないけど、中には価値のあるものも記してあるはず!
「だからってそんな悪党みたいなことを……」
――そういえば。
「承認」
呟き魔力を込める……けど、何も起こらず。
罠すら施してないとは、警戒心ないにもほどかある。
「っつーことは、本人以外には開くことすらできないってわけね……」
くるくる眺めまわしていると――裏表紙に小さく何か書かれているのを見つけた。
……どこの言葉かしら、これ。いや、記号か……?
なんにしても、こんな短くて小さいの、読解できるわけがない。
「……ま、いいわ。どうせ本人がいるわけだし」
「ですです!さ、お風呂行きましょーっ!」
本を元に戻すと、アメリアにぐいぐい背中を押される。
というか……ホントに防犯対策とかしなくて大丈夫なのかね、あれ。