真理を追究する者

□ドタバタの側で1
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「ったく……ホント酷い目にあったわよ。ぶっ飛ばしたからもういいけど」


ぶつぶつと文句を垂れながら、あたしは夕食の鶏肉をかきこんだ。

昨日の謎の女は、数日前にとある事情で吹き飛ばしたゾアナ城の王女マルチナで。

そいつはこともあろうに、このあたしに呪いをかけてモンスターをけしかけてきた!

この呪いってのが厄介で、攻撃すると倍になって返ってくるというものだった。

結局自業自得で呪いが自分に返ってきて、ヤケ起こしたあいつはあたしの魔法食らって吹っ飛んでったわけだけど……。

体中の痛みで半日気を失って、ようやく食べれるくらいには回復したところである。

ちなみに店側にはアメリアたちが話をつけてくれたらしく、あたしになんか言ってくる店員はいなかった。

がつがつ順調に食べていると、とぼとぼ歩いてくる影が見えた。


「あのー、少々皆さんにお尋ねしたいことがあるのですが」

「ゼロス?」

「どうしたんだ?」


あの後からずっと姿が見えなかったこいつは、こいつらしくないやけに深刻な顔をしながら、


「ノウンさん、見ませんでしたか?起こしに行った時いなくなってて、慌てて探したんですけど見つからなくて」

「知らん」

「町にいなかったんですか?」

「はあ……彼女、眼除けの呪文を使いますから目撃者もいませんでしたし、正直お手上げなんですよ」


昨日の話を聞く限り、ゼロスが慌てるのも無理ないとは思うけど。


「そんなの、お腹がすいたら戻ってくるでしょ。おとなしく待ってたら?」

「どこかその辺で拾い食いしてる方が可能性ありますけど……」


あいつはスズメかなんかなの?


「いないとなんか困るのか?」

「あー、えっと……」


苦く笑いながらどう説明したものか、腕を組むゼロスくん。

ガウリイの理解力のなさは、あたしも絶対の自信を持つ。脳みそくらげだし。

と、その時。


「ゼロス〜」


のんびりした声を響かせながら迷子が帰ってきた。

何やらいいことがあったのか、目尻が下がって浮ついた足取りでこちらに駆け寄ってくる。

……って、あれ、本は?


「あ、ノウンさん!勝手にうろつかれたら困るとあれほど――」


ぱっと声にハリが戻ったゼロスは――ノウンの手元を見て、言葉を止める。


「……それ、なんですか?」

「聞かないとわからないなんて〜、ゼロスってば目ぇ悪いですの〜」


ですの?

言いながら、少女はゼロスの首根っこを掴みあげる。


「ちょうどいいので〜今から私と飲み明かしちゃいましょう、そうするのがベストなの〜」

「や、ちょっと待って下さい、っていうかもうすでに酔ってます!?」


わかりやすく青くなったゼロスがバタバタと暴れ始めるが、ノウンにがっちり頭をホールドされて逃れられなくなった。

よく見ると、本はどういう原理か後頭部に引っ付いていて、もう片方の手に握られているものは――開封済みのワインボトル。

あ、この後の展開分かった。


「ノウンさん、何度も言ってるように僕はお酒はダメで……」

「かったーいこと言いっこなしですのことよ〜そんなこと言う子はかったーいタンスの角に小指ぶつけて悶えるのがいいの〜」

「そうだ!リナさんたちと飲むのはどうです?ノウンさんも言ってましたよね、大勢の方が美味しいって――」

「私の飲む分が減るじゃないJK〜も〜そんなんだからからかいがいがあるんですの〜」

「減った方がいいんですけど……」

「ささ!早く部屋行って晩酌でもするの〜」


片腕でズルズル引きずられていくゼロスは最後までバタバタと暴れていたが。

その後ろ姿から、あたしたちは一斉に視線をそらし、残った夕食をがっつき始めるのだった。

ゼロスの苦労を垣間見た瞬間である、と同時に。

あたしはどうにも……あのノウンの、ゼロスとくっついた時の「ムニュッ」を思い出して、若干腹立たしくやけ食いしていたのだが。

あたし、そんな洗濯板じゃないもん……。





今回あとがきは無しで!

お酒は二十歳から!飲んでも呑まれるな!
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