真理を追究する者
□クセ者ぞろいの珍道中!
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セイルーン・シティとは。
聖王都セイルーンの首都であり、フィリオネル=エル=ディ=セイルーン王子が治める巨大な白魔術都市のこと。
街自体が大きな結界になっていて、攻撃魔法……いわゆる黒魔術や魔族の攻撃を防ぐことができ、逆に白魔術は強められるとかなんとか。
かなりの大国の首都とあって、リナたちいわく、ここになら古い寺院や魔導書がたくさんあるから、クレアバイブル探しにはもってこいとのこと。
「……たくさんありすぎると思う」
広げた地図を眺めながら、あまりの数に辟易する私。
こんな街のいたるところに寺院を設置する理由がよくわからない。軍隊じゃあるまいし。
――今は、私と彼の二人しかいない。
リナのお供のアメリア=ウィル=テスラ=セイルーンは、先に述べたフィリオネル王子の娘であり、第二王女継承者でもある。
そんな彼女がどうして悪辣非道のリナ=インバースとともに旅をしているのかは不明だけど、クレアバイブルの情報を探すには王子に聞くのが一番ということで。
どうやら彼女の顔パスでいろいろ情報を集められそう、と王宮に向かっていたのだが……
町には人がおらず、兵士ばかりが立っていて、何やら物々しい雰囲気。
しかも半旗まで上がっており……それで彼は無理そうと悟ったのだろう。
私だけを連れて、とりあえず今日はもう遅いからと宿で一泊。
翌日、カフェで地図を広げたのである。
「まあまあ。とりあえず一つずつ回ってみましょう。ノウンさんも協力してくださいね。何しろ、クレアバイブルの手掛かりを探すんですから」
言って、水をもう一杯注文する彼。
お気楽なこと言ってるけど……聞いた話によると、フィリオネル王子が何者かの手によって命を落としたらしい。
そんな街で身元不明の私たちが行ったところで……
「クレアバイブルの情報?今そんなものにかまっている余裕があると思ってるのか!」
ああ、やっぱり……。
寺院の前にいた兵士と話す彼の後姿を見ながら、胸中でため息をつく。
何度も言うが、王子が暗殺された後である。
確実に王宮どころか街中がピリピリしていても仕方がない状況で、誰とも知らない赤の他人にホイホイ情報を明け渡す、親切で温厚な神経が木の幹ほど太い人がどのくらいいると思っているのか。
諦めて人通りのまばらな街を見回していると、
「ノウンさん、ちょっと」
……嫌な予感しかしない。
努めて他人のふりをする私だが、ニコニコ近づいてきた彼に耳打ちされる。
「例のあれ、よろしくお願いします」
「……あれって、『アレ』?」
「はい。あの姿のあなたを見たら、怪しい旅の者とは思われなくなるかと」
よく言う。自分は堂々と「謎の神官(プリースト)です」と名乗っていたくせに。
……でも、私だってクレアバイブルの情報は欲しい。
暗殺事件で不安がる兵士を説得する方法はそれしかないとは思う。
でも、私は人に顔を見られたくない。あの姿を無闇に人前に晒すのはもっと嫌。
とすれば、やっぱりこの場は……
スタスタスタと兵士のもとまで歩いて行った私は、さっと兵士の陰に隠れて、
「や〜ん、ゼロスお兄ちゃんがいじめてくるぅ(棒読み)」
超絶猫なで声を発揮。
「え、ノウンさん?」
「いじめ?」
「そうなの〜。私にあられもない姿で兵士さんとお話して来いって言ってるの〜(棒)」
『は!?』
これにはさすがに目を剥く男ども。
「き、貴様こんな若い娘さんに何をさせようとしている!?」
「僕そんなこと言ってませんよ!?」
「やはり怪しい奴め!ひっとらえろ!」
続々現れる兵士にたまらず逃げる謎の神官。
うん、せいぜい囮役よろ〜。
私はその間に……
「君、どこの子?酷い目にあっただろう。中で休んでいくといい」
…………。
「ごめんなさい、この後行くところがあるから……」
――作戦、盛大に滑って終わる。