真理を追究する者
□対魔族用の兵器!?
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あたしは、目を疑った。
異形の魔族の近くに、もう一体現れた別の『何か』を見たから。
それは例えるなら――天使。
神秘的なオーラを放ち、腰辺りからは悠然と白い翼が生えている。
頭上には天使の輪……いや、魔法陣が光を放ちながら舞い踊っていて。
日光を乱反射する白い髪と陶器のような肌は、より一層この世のものとは思えない。
金に輝く瞳には一切の感情がうかがい知れず、まるで見たものすべてを見透かすような錯覚まで与える。
完成された美とは、まさにこのことを言うのだろうか。
それほどまでに圧倒的な存在感を放つ『天使』に――あたしだけじゃなく、マルチナも声なく見上げている。
それは数秒か、数分かわからないが……魔族が声を上げたことで、彼女に惹きつけられていた意識が急速に引き戻された。
「お、お前……まさか、魔族か!?」
どうやら奴らの仲間じゃないらしい。
異形の魔族は動揺そのままの声で天使を見上げる。
こいつらが襲ってきた理由もわかんないのに、さらに別の魔族が来て、しかも敵か味方かすらわからない奴で。
まあ、魔族が無条件にあたしに味方するとは思えないけど……。
天使は声に、ゆっくり首を傾けながら、
「魔族?……私が?」
形のいい唇を動かし、言葉を紡いで――
「ブッフ――――!!」
盛大に吹き出した。
……へ?
「この私を見て同族と勘違いするとかありえなくないですか?草生えるんですけど!大草原不可避wwwwwwなんですけどぉ――っ!!」
お腹を抱えて爆笑し、次から次へと意味不明な言葉を並べ立てる。
意味わかんないし敬語なのはかろうじてわかるけど……なんだろう。
――ひじょーに腹立つ。すっごいイライラする。とりあえず一発ぶん殴りたい。
今までの神秘的なオーラが一気に吹き飛んだ彼女は、さんざん大笑いした後、目元をぬぐって呼吸を整える。
「はあ……まさか低級の魔族に、同族かどうかすらわからない目が節穴な方がいらっしゃったとは……ああなるほど!だからあなたの目は真っ黒だったのですね元から穴が開いていたわけですね!それは申し訳ありません私の方が至らなかったようでプゲラ☆」
無遠慮に煽りまくる天使に、異形の魔族は頭に血が上ったように唸る。
「黙れ小娘が!なんかわからんが、こいつを殺せ!」
「あ〜ら状況理解が追い付かないですかまさしく愚の骨頂の極みですねえ笑」
「やかましい!」
あたしも思わず言いたくなることを叫んで、手下をけしかける魔族。
先ほどと同じく魔力弾を放つも、天使はにやりと笑って華麗に避ける。
「ああ、これだけの数の魔族を盛大に葬れる日が来るなんて……!下級クラスのゴミ同然魔族ばかりなのがいささか不満ではありますが……まあそこはしょうがありませんね。クラスが上の者を倒せば、世界の均衡を保てませんし」
天使は攻撃の合間を縫って、手を前にかざす。
即座に手の中に本が現れ……って、本?
疑問に思うより前に、本から魔法陣が浮き出て――そこからさらに、細い棒状のものが現れる。
あれは……杖?赤い宝玉が先端にくっついていて……なんで逆手に持ってるの?
「これを使うのも久方ぶりですね……っと!」
言うや否や、それで魔力球を弾き、同時に衝撃波のような白い帯状の魔力を放つ!
それは風を切る音とともに下級魔族に突き刺さり、悲鳴とともに切断する!
「何っ!?」
驚愕の声を置き去りに、彼女はさらに杖を……いや、剣を振り回し、白い帯を続々魔族に当てていく。
不気味な悲鳴を上げ、次々と塵になって消えていく手下。
しかしあの異形の魔族だけは、焦る声を上げつつも空間を移動しながら避けていた。