真理を追究する者
□『兵器』である少女
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「さぁーて!きびきび白状してもらうわよ、ノウン!」
セイルーンでのお家騒動が片付き、新たなる旅に出たあたしたち。
魔族の大物と戦うためには、より強力な術を手に入れなければならない。
そのために秘伝の書なりクレアバイブルなりを見つけなければ!
しかしその前に……解消しなければならない問題が一つ。
「……何?」
――とある森の中で野宿するあたしたちは。
いつものよーに薬品をいじくるノウンに、疑念の視線を向ける。
「あんたの正体について……どーも腑に落ちない点がいくつもあるからね。洗いざらい吐いてもらうわよ。あんたは一体何で、どういう目的があって行動しているのか」
ついでにゼロスにも指をさし、
「プラスに!ゼロスとどうして行動しているか!クレアバイブルの情報って線もあるけど、それだけじゃないんでしょ?ちゃっちゃと言わないとぉ……!」
手をグーにしてすごんで見せても、ノウンはそっけない態度を崩さない。
「……はあ。で、何が知りたいの」
「だーかーらっ!正体と目的だっつってんでしょーがっ!」
「正体なら言った。『対魔族用の兵器』。目的は特にない。自由気ままに各地を巡ってる」
「だからそれが……!」
「酷いですノウンさん!私たちのことを見捨てるなんて!」
いきなし割り込むアメリア。
「悪行を成し、多くの人々を苦しめるのが魔族!そんなのを放っておくなんて、考えられません!正義の名のもとに鉄槌を下すべきです!」
続いて、ゼルも便乗する。
「貴様が魔族の仲間ではないことははっきりしたがな、対魔族兵器というなら、魔族を率先して倒そうとしないのは何故だ。何を考えている」
ガウリイは視線だけノウンに向けるのみ。
そんなあたしたちに、彼女はちらとゼロスを見やった。
不穏な空気にキョロキョロするマルチナの横で、彼は小さく肩をすくめる。
「……ちっ」
舌打ち……ではなく、口で不満を表す彼女は、薬品に目を戻した。
表情は、相も変わらず乏しいまま。
「……正体に関しては言った。私は兵器。それだけ」
「それだけって……ともかく人間じゃないのね?とすれば、合成獣(キメラ)とか……人造人間(ホムンクルス)とか?」
「わからない」
『は?』
あたしとゼルの声がハモった。
「私を創った人が言うには、私は人から生まれたらしい。でも、とある処置をされて、強大な力を得て生まれたって。その処置の内容は分からない。だから何とも言えないの」
……う、うむむ?
「えーと、実験体にされたってことかな。だったらその記録くらい残ってないの?もしくは他の実験体はいないの?」
「残ってない。もしかしたらあったかもしれないけど、それは全部ゼロスに燃やされた」
「僕も仕事でしたので」
にこりと笑うゼロスくん。
「それに私以外の被験体はいなかった。もしくはいても耐え切れずに死んだ。これに関しては推測の域を出ない。創った人はもういないから」
いない……のは、なんとなくわかっていた。
『兵器』であり魔族への対抗策として創られたなら、一つの場所に留まることなく自由な旅をしているのがそもそもおかしい話。
しかもゼロスなんぞとゆーあやしーやつが横で監視しているなんて。
こいつに限って『実は創造主さんとお友達でして』とか『善意で一緒に旅してます』とかゆーこともないだろーし。
――しかも。
写本を燃やしたゼロスに記録を燃やされた、ということは……
「記録とは、クレアバイブルの事――あんたは、クレアバイブルの知識を使って創られたのね?」
小さくうなずき、試験管の中に粉のようなものを入れるノウン。
――『異界の知識より生まれ堕ち――』
あれは、そういう意味だったのか。