真理を追究する者

□根性の剛速球!
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――ブラス・ラケッツ。

太古に全国各地で流行ったバトルゲームの一種。

ネットを挟んで二組に分かれ、魔力ラケットでボールを打ち合う競技のこと。

打ったボールは魔球となり、相手選手に襲い掛かる。

体力と気力の限りを尽くして戦う競技。

なお、ブラス・ラケッツは魔球を用いた格闘球技である。

ボールを相手のコートにバウンドさせ、一人ノックダウンをさせればOK。

世界博物学大百科より。






――とある飯屋さんにて、あたしは妙なおっちゃんに声をかけられた。

あたしのこんぢょーとやらを見込んだとのことで、一緒にブラス・ラケッツとかいうのに出ないかと誘われたのだ。

どーせくだんないし、あたしはパスパス。


「優勝カップにはクレアバイブルのことが書かれているそうですよ」

「クレアバイブル!?」


百科事典を読むゼロスの言葉に、ゼルが大いに食いついた。

おっちゃんに掴みかかり、前後に揺さぶる。


「リナが出ないなら俺が出るぞ!いいんだろ!?」

「ああそれは無理です」


即座にゼルの言葉を否定するゼロス。


「ブラス・ラケッツは基本的に、男女ペアとあります」

「…………っ!」


石化するゼル……が、何やら机の隅で化粧道具をパフパフし始めた。

ノウンがそれを追いかけ横から指導する。

この子のきょーみが今度はどの角度にねじ曲がっていったのか。


「ノウンさん、お化粧したことあるんですか?」

「一通りのやり方なら、ゼラちゃんやダルちゃんから教えてもらったから」

「誰ですか?それ」

「……うーんと、時々会う人」


問答の隣で、おっちゃんに付きまとわれるあたし。


「た、頼む、わしと一緒にブラス・ラケッツを!」

「どーでもいーけど、なんであたしなのよ?」


抗議するあたしにも、おっちゃんはまっすぐな目で、


「――根性だ!」

「え、こんじょー?」

「よいか、勝負を制するのは根性だ!先ほどお主が肉団子の最後の一個を手にした時、わしははっきりと確信した!相手が苦しい時は自分も苦しい。だが苦しさを乗り越えた者こそが、真の勝利を掴むことができる!その力が『根性』なのだ!!!」


ピシャ――――ン!!


背後に雷鳴とどろかせ、おっちゃんはこぶしを振り上げた!

……こんぢょー論もここまでくると、一種の病気なんじゃなかろーか。

と。


「――まだそのような時代遅れの戯言を言っているのですか」


突然朗々とした声が響き渡り、同時に魔力球が撃ち込まれる!


がしゃああああああん!!


それは食堂を易々と吹き飛ばし、営業妨害という言葉が裸足で逃げだすほどに店をボロボロにした!

――そして、高飛車な笑い!


「そう、この大会で優勝するのはこの私!」


――マルチナ!


「キース!いったい何の真似だ!」


おっちゃんはあいつの隣に佇む男に鋭い視線を向ける。


「知れたことです。この性根のひねくれ曲がった、まさに私の求める素質を持つ素晴らしいパートナー・マルチナ嬢と組み、優勝を狙います」

「何っ!?」


あいついつの間にあんな嫌味な男と組んでんのよ。

性根がひねくれ曲がり切ってるのは心中で頷いておく。


「ちょっと引っかかるところはあるけど……私はキース様を信じて、技を磨きましたの」

「そう、ブラス・ラケッツは『競技』なのですよ。競技とは読んで字のごとく技を競うもの。技術の発展と向上無しに勝利はあり得ません。時代遅れの根性論で我々に勝てるとでも?」

「黙れぃ!お前のは相手の裏をかく小手先の技術論だ!男だったら正々堂々勝負をせんか!」

「相手の裏をかくことも立派な戦術です。要は勝てばよいのです」

「その通りですわ。そしてキース様と私が組めば、勝ったも同然!あなたに勝ち目はありません事よ……リナ=インバース!
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