真理を追究する者

□傍若無人に東奔西走!
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――事の始まりは、一通の手紙からだった。


差出人に心当たりはなかったけど、依頼料が破格でなんとも胡散臭い手紙である。

……でも、まあ……イタズラ覚悟でも一度行ってみるか。

てなわけで、その手紙の依頼とやらを受けるために港町まで出向いたあたしとガウリイ。

そこでは、各国の王様がお金を出し合って造られた船がそろっていた。

あたしたちのいるここは、千年前の降魔戦争以降、魔族の結界によって外の世界に出ることも入ることもできなくなっていた。

しかし最近、結界を張っていた魔族の一人、冥王(ヘルマスター)フィブリゾが滅ぼされたことにより、魔族の結界が消え、晴れてあたしたちは外の世界に出ることができるようになったのだった。

そこでセイルーンの王子フィルさんは、外の世界に平和使節団なるものを送り込むという。

それに目を付けたのが、あたしたちの仲間の一人、ゼルガディス。

自分の身体を元に戻すための方法を探している彼は、外の世界にその秘宝があるかもしれないと踏み、忍び込むなりして外の世界を目指そうと考えていたのである。

再会を喜ぶあたしたち――の前に、ようやく現れた依頼人、フィリア。

そいつは私たちの力を試すとか言って、なんとゴールド・ドラゴンをけしかけて港町を襲ってきた!

なんとかやっつけたはいいものの、港町はめちゃめちゃ、船はボロボロ……というか、あたしたちの乗る船以外は全滅。

しゃーない、このまま逃げる……じゃなくて、外の世界に出発!

そうして航海……漂流……まーなんでもいいけど!たどり着いた港町で、いきなし町人から助けを求められた。

どうやら野盗に襲われていたようだが……ま、あたしたちにかかれば爆弾だの大砲だのなんか脅威でも何でもないっての。

かくして盗賊団を追い払ったあたしたち――が、再び現れるゴールド・ドラゴン。

なんと、その正体はあの謎の女、フィリアだった!

彼女は火竜王の神殿に仕える竜族の巫女だという。


「これからあなたたちには、『滅びを告げる神託』に従っていただかなくてはなりません」



闇の星を統べる者 光に招かれ この世に闇をもたらさん

竜の血の連なり 闇と光とその狭間の力を導き 星の一片(ひとかけ)呼び覚ます

星を紡ぐ五つの光 その力持て

黄昏よりも昏き存在(もの) 暁よりもなお眩しき存在(もの)

導かれし力を束ね 我にただ天空を貫く 一条の矢を与えん




数週間前に降りたという神託の内容。この『闇と光とその狭間の力』を、フィリアたち竜族は『人間』であると推測し、人間が危機を回避するカギになるだろうと考え、力のある者を探していたという。

それで力試し……神託に従い、これからを生き残るために。

しかもそれが故郷(くに)の姉ちゃんからの命令とあったら、断れるわけがない。

――そうしてあたしたちは、フィリアの仕える火竜王の神殿に向かうことになった。







「あーあ、結構気に入ってたんだけどなあ、この港町」

「まあまあ、次の街にはもっと面白いことがあるかもしれないじゃないですか」

「美味い食い物もあるかもな」


説得されつつも、やっぱり名残惜しくて愚痴を漏らすあたし。

あたしとガウリイはこの街の名物料理巡りしてただけだけど……アメリアとゼルが騒ぎなんか起こすから……

どーやらこの外の世界、魔法技術が発達していなくて、魔導士といってもせいぜいが明かり(ライティング)とか眠り(スリーピング)が使える程度らしく。

寺院とかを破壊しまくるゼルと、魔法を使っただけでもてはやされたアメリアが目立ちまくるのなんので……まぁったく何やってんだか。

これ以上目立って化け物扱いされるのはごめんだ、とか言うゼルに引きずられる形で、港町を後にすることとなった。

フードとマスクで完全に不審者なゼルが出店の裏やらなんやらをうろうろしだしている中――不意に。


「――!?」


ニコニコしていたフィリアが周りをきょろきょろ見回し始める。


「どうしたの?フィリア」

「いえ……何か急に、えもしれぬ悪寒が……」

「新しいご神託ですか?」

「そういうんじゃなくて!なんかこう、わけもなく身体の奥底から怒りがこみあげてくるような……っ!!」


瞬間、また彼女の身体がブルブルッと震え――スカートの下から、金色の尻尾がぴょこんと飛び出した!

――ちなみにここは、いまだに人通りの多い商店街のど真ん中だったりする。

あたしたちはあわててフィリアを囲む……けど……


「……誰にも、見られてないでしょうね?」

「いやー、見られたなこりゃ」

「目立っている……ああ目立っている……っ!」

「わかってます!わかってますから落ち着いて……!」


群衆の視線が一斉にあたしたちに向いている。無理もないけど。

こーなったらフィリアが落ち着くのを待つしかない。

無駄かもしんないけど、一応声を張り上げてみる。
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