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□第四章
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カーテンから漏れる朝日が眩しい。

青葉が目を開くと、紅葉が涎を垂らしてスカスカ寝ているのが目に入った。

フワフワ浮かぶ意識をゆっくりと覚醒させること30秒、ようやく起き上がる。

――眠い……ような……ダルい……ような……。

ベッドの寝心地がよほど良かったのか、熟睡後の倦怠感に襲われつつリビングの扉を開けると――

「おはようございます、ご主人!」

犬耳をぴこぴこと揺らしながらメイド少女が笑顔で話しかけてきた。

すがすがしい朝にぴったりの満面の笑みに、青葉は眉間に手を置き、心底疲れた声を上げた。

「ああ、夢じゃなかったんだ……」

「昨日もそれ言いましたよご主人!眠いんですか?なら実体を得た私からの愛のこもった平手打ちを……」

「起きてる!起きてるからやめろ!ったく……」

意気揚々と素振りしながら迫ってくるメイドを押し返し、リビングに目を向ける。

大窓からは薄暗い、やはり雲一つない空が見える。

広すぎるリビングには、部屋の主の姿はなかった。

「白銀とロイドと、あと紅葉のガイドは?」

「お二人は白銀さんの部屋みたいですよ。紅葉さん……いや暁さんのガイドは主人が起きるまで待機だそうで、コンピュータの中です」

「コンピュータってのは白銀の部屋にあるのか?」

「ありますけど、そこにあるテレビもコンピュータになってるみたいで、昨日はそこに入ってました」

メイドが指す方を見ると、昨日はいろいろあって気付かなかった大型のテレビが、光をぼんやりと反射していた。

「作業用とで使い分けてるのか?」

「さあ、わかりませんけど」

「ロイドが白銀の部屋にいるなら、あいつもう起きてるのか」

「たぶん。まだこちらにはいらしてませんので何とも」

青葉はメイドの横を通り過ぎ、昨日白銀が入っていった部屋のドアをノックしてから、

「白銀、起きてるか?」

返事を待たずに扉を開けた。


そこで、一糸まとわぬ姿でベッドに座っている白銀の背中と、かっちりとした執事服を着こなし、手に女性用の下着を持ってたたずむロイドと鉢合わせる。


「「…………」」

互いに絶句する青葉とロイド。

しかし白銀はまったく気づいた様子もなく、

「ろいどー、ふく、はやくしろー」

どうやら寝ぼけているようで、頭を右に左に揺らしながら気の抜けた声を出した。

それで我に返ったロイドは、

「申し訳ございません。ただいま」

と言いながら青葉に向かって「しっしっ」と手を振る。

青葉はブンブン頷き、静かに扉を閉めた。

そのあと今更ながらに出てきた大量の冷や汗を背中で感じつつ、扉にもたれかかり息を大きく吐くが――

目の前に、ひたすらこちらをニヤニヤ見つめるメイドの姿を見た。

「……な、なんだよ」

「いやぁ、青春ですねえご主人。女の子の体をあんなにじろじろと……♡」

「う、う、うっさいな!!」

「ていうかご主人自覚持ってくださいよ。いくら口調があんな感じだからって、異性の絶対領域の中に土足でズケズケ入るなんて、どういう神経の持ち主ですか、人格疑います」

「お前は絶対領域の意味を辞書で調べてから出直してこい!」

若干上ずってしまう声にさらに羞恥をかきたてられた青葉は、バスンとソファに腰かける。

ニヤニヤからジトッとした目を向けていたメイドは、再び笑顔に戻って「紅茶淹れますねー」とキッチンに消えていった。

誰もいなくなったリビングで、青葉は一人、頭を抱えながらぽつりとこぼす。

「……そういえば、白銀って女の子なんだっけ……」
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