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□第六章
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『――…………――――……』
声が聞こえる。
暗い視界の中、声だけが、まるで電波の届きにくいラジオのように不鮮明に鳴り響く。
『…………の子は……葉は良い子……です。なのに……してこんな……に……』
声の主を思い出すのに時間がかかってしまった。
それほどまでに遠く、懐かしい声だったから。
――ああ、これは夢だ。
――この声は、母さんのだ。
意識のどこかで、彼はぼんやりと意識していた。
その間にも、絞り出すようなノイズ音は続く。
『青葉、目を……して……願い……帰ってきて――――』
ブツンという音が頭を遮った。
同時に視界が開ける。
白い天井と見慣れた照明が、朝日に照らされているのが目に入った。
「…………」
いつもの気だるい目覚めではなく、目も頭もはっきりしている。
天井を見つめながら、青葉は先刻の夢を反芻した。
――なんだったんだろう、さっきの夢。
不鮮明に聞き取った声は、彼のよく知る母親のものではなかった。
――『帰ってきて』なんて……家出とかしたことあるけど、言われたことないのに。
――それにちょっと金縛りのような感覚があったような……。
――いや、今もある。
考えながら、主に動かせない左腕を見てみると――
自分の幼馴染みが左半身に抱き着き、涎を垂らして幸せそうに寝息を立てているのが見え、
「……ッ!!」
それを認識した直後、彼はそのこめかみに強烈な肘鉄を食らわせた。