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□第八章
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少女は夢を見る。


見るたび変わる景色に目を輝かせ、見たこともないものに心惹かれる。


ある時は遊園地。


ある時は日の当たる公園。


ある時はイルカのいる海の中。


ある時は星と星の間。


彼女はすべてを見、触れ、感じることができた。


そして、すぐ近くで笑いかける愛しい人を振り返り、心の底からの笑顔を返す。


夢は彼女のすべてであり、夢もまた彼女を暖かな光で包み込んでいた。







「どういうつもりだ、カイ」


そして今日もまた、彼女は夢を見続ける。


「それはこっちのセリフだよ、白銀」


灰色に染まる視界の中、鮮やかな青をたたえた少年に、己の武器を構えながら。












――どうしてこうなったんだろう。

青葉は白銀をにらみつけながら、今の状況の理由を思い返す。

彼の背中には、痩せた初老の男性がいた。

彼はこのアパートのたった一人の住人である。

すっかり恒例となったモンスター退治を終えた二人は、そのまま近くのアパートに向かい、彼を発見した。

顔色の悪い、全体的に骨ばっているその男は、二人を快く招き入れた。

軽い談話の後、青葉は男にいつものように自殺の理由を尋ねたのだが――

聞いた瞬間、白銀がいきなり武器を持ち出し男に襲い掛かったため、慌てて止めに入ったのだった。

「そいつはどのみち助からない。時間をかけるだけ無駄だ」

槍を携える白銀は、いつも以上に目を吊り上げ、青葉の背後の男に殺意を向ける。

当の男は茫然としていて、青葉と同じように状況を理解できていない様子だ。

「助かるかどうかは分からないよ。とりあえず槍を引っ込めて」

なるべく穏便に声をかけるが、白銀は譲ろうとしない。

「ダメだ、こいつは今ここで殺す」

「どうして?いつもは俺たちに任せてくれるのに!」

「何度も言っている。そいつは助からない。ここで死のうが元の世界で死のうが同じだ。楽に死ぬか、苦しんで死ぬかの違いだ。今殺せば苦しまない」

「横暴だよ!」

「邪魔をするなら、お前も斬る」

切っ先が、男から青葉に向き直る。

本気であることを察した青葉は恐怖で体をこわばらせるが、それでも退かない。

「お願いだよ、考え直してくれ。確かに戻れば苦しい思いはすると思う。けど今ここで死ぬのはダメだ。とりあえず暁を待とう。あいつなら何かいい案が出るかもしれない」

ちなみに暁――紅葉は、モンスターに追い掛け回されて行方知れずとなっている。

実際にはGPSを出せばすぐ居場所を探査できるのだが、二人とも面倒くさがって連絡を入れるだけ入れてさっさと移動したのだった。

おそらく、想像以上のしぶとさという安心感があるからだろう。
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