真理を追究する者
□いにしえの契約!不死を求める者!
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「ゼル!」
そう、今回の作戦に協力しないと言い切りどこかに消えていた、あたしの便利アイテムの一人、ゼルガディスがいた。
岩のような青い肌に針金のような髪の彼は、ロックゴーレムとブロウデーモンの合成獣(キメラ)である。
そんな体を元に戻すために、彼はクレアバイブルの写本を探している。
もしかして……いやもしかしなくても、あたしらの後を追ってきたのだろう。
しかし、あたしが声を上げたのは、ゼルの姿を見たからじゃない。
その後方――剣を構える彼の影が揺らぎ、ぬぼぉっと立ち上がったから!
「!」
ゼルも気づいて振り返るが――遅い!
影はゼルの脇を通り抜け、跳躍し、
ずがしゃああぁぁぁ!!
リーダーの男の顔面に飛び蹴りをかまして着地する!
……は?
てっきり盗賊の一味かと思っていたあたし……と、おそらくゼルも固まり、横でゼロスが暢気な声を上げる。
「あれ?おかしいですねえ、彼女はしっかり眠らせておいたはずなのに」
「彼女……?てか、あれあんたの知り合いなの!?」
女らしき影は、フードをかぶって完全に顔を隠していた。
左手には重厚そうな本が開いたまま抱えられており、大男を蹴り一つでノックダウンさせたのと合わせて、かなりの力の持ち主だとわかる。
「ええ。来られては困るので、眠ったのを見計らって厳重に魔法をかけていたのですが……逆にそれで感づかれてしまったのかもしれませんね。はっはっは」
……いや、眠ったんだったら感づく暇ないんじゃ……?
話す間に、人影はクレアバイブルの写本をばばばっと確認し始める。
「!……おい、それを渡せ!」
ようやくフリーズから溶けたゼルが、剣を構えて人影に肉薄し――
「…………」
人影は無言のまま、ぽいっと紙片をその場にばらまいて、再びゼルの横をすり抜けた。
へ?
目を点にするあたしとゼルの視線に……おそらく気付いても無視してるだけだろーが。
いつの間にか用意されていた袋を担いで、よたよた去っていった。
ガシャガシャ聞こえるあたり、中身は金貨や財宝だろうか。
そーいえば……部屋の一角に積もってた金貨がごっそりなくなっているよーな……。
「相変わらずの俗物っぷりですねえ。わかりやすくて助かりますけど」
「なんなのあれ……ああもう、ツッコミどころありすぎ!」
なんで来られたら困るとか、ゼルにくっついてきたのかとか……聞きたいことは山ほどあるけど。
ゼルが紙を集め始めたのを見て、いったん胸にしまっておく。
「こらゼル!あんた最初から抜け駆け狙ってたわね!?別行動のふりして、あたしたちの後つけてきたんでしょーが!」
「悪く思うな。事この件に関しては、譲るつもりはない」
言って、すたすたと歩み去るゼル。
あーもー、自分勝手なんだから!
……と、まあこの件をいつまでもグダグダ語るつもりはないし、さくっと割愛させてもらうことにする。
結論から言えば、写本は見る前にゼロスに燃やされ、内容を知ることはできなかった。
余計な情報を見せないとか言ってたけど……ゼロスの本当の目的は、一体……?
それはともかく、よくもこのあたしをダシに使ってくれたもんよ!
あのよくわかんない女と一緒に、今度会ったらぶっ飛ばしちゃるっ!
……しかしあたしたちは、思っていたより早くあの二人と再会することとなった。