真理を追究する者
□クセ者ぞろいの珍道中!
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「酷いですよノウンさん!」
「こっちのセリフですけど何か?」
セイルーン王国を抜けた先。
木々が生い茂る森の中、彼と延々口論し続ける。
「アレは嫌だって言ったの、もう忘れたの?私にとっては『あられもない姿』なんだから、間違ってない」
「クレアバイブルの情報を手に入れるためなんですよ?そんな一時の恥くらいで機会をふいにするなんて」
「一時だろうと一瞬だろうと、嫌なものは嫌。というかゼロスもどうせ私が行ってる間に情報抜き取ろうとしたでしょ」
「え、それはその……というか、中に入っていいって言われたのでしたら入ればよかったのに」
「知らない人、無理」
「えー……」
無茶振りする彼に、私はもう溜息しか出ない。
こういう人だってわかってるから、怒りすら湧いてこない。
リナに温厚って言われたけど……リナが短気で怒りっぽいだけだと思う。
せっかくセイルーンに入ったのに、彼はしばらく入れないだろうし……どうしようかな。
……まあ、彼に合わせる必要はないんだけど、一人で入ろうとしたら五月蠅そうだし。
「そろそろお腹すいたなあ。ゼロスお兄ちゃん、ご飯行こう」
「その設定もうやめません?」
とぼとぼ歩く私たち――その前に。
数人の男たちと、やけに露出の多い女がいた。
女は悲鳴を上げており……誰がどう見ても、襲われているようにしか見えない。
まあ、私には関係ないし、無視して……
「あ?おいこら、何見てんだ?」
『え』
単に見ていただけなのに、男たちはあっという間に私たちを取り囲む。
「ほぉー、神官様かよ。金持ってそうだな」
「横の女もよさそうだぞ。おい、怪我したくなきゃおとなしく金と女置いてきな」
問答無用とばかりに武器を取り出す集団。……典型的な悪党集団って感じね。頭弱そう。
逃がしてくれる気配も、話し合いに応じる気配もなさそうだなあ。とすれば……。
ちらりと互いに目配せをした私と彼は――同時にその身を躍らせた。
ルーン山の魔法医ルナン。
隠居して山にこもっているが、今も健在で腕もなまっていないとか。
あらゆる呪いを解くことができる偉大な魔法医だというフィルさんの受け売りだけど……。
まあ噂でも、行ってみるしかない。
――それが、あたしの魔力を取り戻す手段なら。
事の始まりは、フィリオネル王子……フィルさんの殺害事件だった。
このところ頻発するフィルさん暗殺事件。国民が巻き込まれることを恐れた彼は、単騎で町を離れ……その時襲われ殺されたという。
フィルさんが襲われた要因として考えられるのは、セイルーンを狙う敵国がフィルさんの存在を煩わしく思ったか……フィルさんの持つ第一王位継承権を欲している者の仕業か。
私が自ら正義の鉄槌を下してやるっ!と駆け出したアメリアとともに、あたしたちはフィルさんが襲われた現場に向かったところ。
なんで!?どうして魔族がセイルーンを狙ってんの!?
さらに現れたのは……死んだと思われていたフィルさん!
魔族を撤退させ王宮に戻ったあたしたちは、第二王位継承者クリストファーさんと、彼のもとに仕えてるという宮廷魔導士カンヅェルとマゼンダとかいう怪しい奴らと遭遇した。
今のところ一番怪しいのは、そのクリストファーとかいうおっちゃん。そのもとに仕えてるってことは……。
――と、その矢先、魔族があたしとアメリア、さらにはおっちゃんの息子アルフレッドまで狙ってきた!
ギリギリで何とか追い返すことができたわけだけど、今度はあたしに呪いをかけてきて!
攻撃魔法どころか、明り(ライティング)さえ使えなくなった!どーしよ……。
そこでフィルさんのことはみんなに任せて、急遽あたしは一人、ルーン山にいる魔法医を頼ることになった。
みんなの前では気丈にふるまってたけど……。
切ないよなあ……魔法が使えないって。
…………。
きゅるるるる……
あ。
「……あはははは。まあ、落ち込んでる場合じゃないっか」
ここは一発、飯でしょやっぱし!
ご飯でも食べて、楽しい旅をってね――