真理を追究する者
□対魔族用の兵器!?
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火が付いたような勢いだったノウンは、変身を解いた瞬間テンションが急降下し、
「…………」
フードを目深にかぶって、近くの木の下に横になってしまった。
ゼロスだけじゃなく全員を睨んでたけど……恥ずかしかったってこと?
「あの姿を維持するだけで結構な魔力を消費するんですよ。本来なら魔族の攻撃を吸収することで維持するんですけど……」
「大半を避けてたもんね……ていうか、いつものノウンと全く別人だったんだけど」
「変身すると気分が高揚して、人格がおかしくなるらしいです……まあ、本人にしかわからない感覚なので、僕からは何とも言えませんが」
長年一緒にいるゼロスにもわからないことがあるのは前に話したときに把握してるし、あとのことは本人に聞けばいいとして。
「ねえゼロス、ノウンのつけてる呪符(タリスマン)なんだけど」
「はい?」
あたしは寝てるノウンに指をさしながら、
「首から下げたのと、ベルトの奴と、そして両手首のブレスレットにはめ込まれたやつ!その4つを使って、魔力のキャパシティを増幅してるんでしょ」
「さすが、見破られちゃいましたね」
「最初にこいつが唱えた呪文の内容は、魔力の拡大だったもんね。呪文だけで拡大するんなら苦労しないわ」
もしかしたらこいつだけは呪文だけで魔力を増幅できるって可能性もあったけど……
ノウンは呪文を唱える時、わざと両腕を上げて袖を落としていた。
それをする必要があり、十字を切るようにしてはめ込まれた同一の呪符があるということは、それによる魔力増幅を図ったことは推察できる。
「なんでも魔血玉(デモン・ブラッド)とかいう石で、それぞれが赤眼の魔王(ルビーアイ)、闇を撒くもの(ダークスター)、蒼穹の王(カオティックブルー)、白霧(デスフォッグ)……この世界と他の世界の魔王四体を表しているとか」
異世界の魔王!?うわぁ話がでかい!
「な・お・さ・ら!このタリスマン売って!」
「だ、ダメです!これは紋ある高貴なお方からいただいたもので……」
「じゃあなんでノウンがつけてんのよ。この子がもらったやつじゃないんでしょ?」
「ええっと、その……い、いろいろありまして」
「まーなんでもいっか!200!いや思い切って300出しちゃう!お〜太っ腹だねえリナちゃん!」
「ですから……」
たじたじするゼロスの真後ろから、今度はマルチナが声を上げる。
「ええい!400!!」
「Σえっ!?」
「なんであんたが参加すんのよ」
「ゼロス様、リナにやるくらいなら、このマルチナに譲って!出世払い、分割、利息なし!」
「そーはいくか!500!」
「いえ、その……」
「510!」
「ですから……」
「520!」
「530!」
「ダメなものはダメなんです」
「え〜い550!これでどうだ!」
困ったように頭をかくゼロスはふっと笑い、
「550万なら」
「よし買った!」
「Σええっ!?」
あたしの言葉に目を剥いて固まった。
マントを外し、いくつかの品を並べる。
「フラウレの根が一束と、メルティアの薬が二つ、ラージリンの指輪が一つ、レムタイトの原石、おまけにクルハの丸薬もつけちゃう!これだけあれば、捨て値で売っても550万はかーるく超えるわよ!」
唖然としているが、あたしは逃がす気はない。
「売るわね?」
「……で、ですが……」
「売・る・わ・ね?」
「…………っし、仕方ありません」
渋々といった様子で、ノウンの横にしゃがみ込む。
「ノウンさん、起きて下さい」
しかし揺すっても頬を叩いても、一向に起きる気配がない。
あの変身って、そんなに消耗するものなのか。気軽に使えないからノウンはずっと使えなかったのね。
「じゃあ一発蹴りかまして――」
「ああいえ、そんな手荒な真似しなくても」
苦笑いをして、そのままノウンの首のタリスマンに手を伸ばす――
瞬間、ばちっと目を開けるノウン。
「え」
すぱああぁぁん!!
バネ仕掛けのように右手が跳ね上がり、ゼロスの頬を思いっ切りぶった!
もんどりうって倒れるゼロスと、そのまま目を見開いて固まるノウン。