真理を追究する者

□闘いのアルテメ塔!
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「ぃぃいやだああぁぁ!絶対俺はそんなみっともないことはしないぞ!!」


ぞざざざざと背後に下がるゼル。


「ンなこと言っても、ほかに手段がないんだからわがまま言わないの!」


彼の前にはとーぜんあたし。

しかしその姿は……まあ、考えたら恥ずかしくなるからあんまし言いたくないけど……

マヌケな顔したお馬さんの着ぐるみで、ゼルを説得している。


「抵抗があるのは最初だけだって。ほら、みんなもう結構楽しんじゃってるわよ」


振り返った先には、めいめいに着ぐるみを選ぶ5人が。


「いやあ、なかなかお似合いですよアメリアさん、そのヒトデ」

「ヒトデじゃありません!これは、愛と正義の希望の星!」

「あー、それいいなー!私はどれにしよー?」

「マルチナ、これは?クマさん、可愛いよ」

「ええ?……でもまあ、あんただったら似合うかもね」

「本当に?じゃあこれにしようかな……あ、となると魚の着ぐるみのゼロスは捕食対象……?」

「えっ!?」

「ちょっと!ヘンなこと考えないでよ!」

「あー……なぜか心が安らぐなぁ……(クラゲ)」


きゃっきゃと賑やかなメンツに、ゼルが吐き捨てるように呟く。


「……ちっ、馬鹿馬鹿しい。他の奴がどうだろうと、俺にはできん。これはポリシーの問題だ!」

「あっそ、なら別にいいけど……それで、ゼロスに先を越されたって知らないからね」

「ぐっ……そ、それは困る」

「それは困るなら、どーせこんなもの一時の恥だから、ほら着た着た!」


ぐぐ……と呻くゼルは――渋々ウサギの着ぐるみを手に取った。








「なるほど、効果覿面ね」


来た時とは違い、人形たちは触ろうが服をめくろうが反応する気配がない。


「確かに人形たちから敵意は消えたようだが……なんだって俺がこんな目に合わなくちゃならないんだ」


まぁ〜だぶつくさ言ってんのねゼルは。可愛いのに。


「はぁ〜い!どうバニーちゃん、そっちの様子はー?」

「ああ、全然ダメだ……ところで、そのバニーちゃんてのはやめてくれないか」

「えーどうして?結構お似合いよゼルうさちゃん」

「お前なあ……っ!」


並ぶ人形を持ち上げ、ゼロスがにこやかに振り返る。


「こちらにも、それらしいものは見当たりませんねえ」


こっちは自然体すぎて逆に着ぐるみが気にならない。


「アメリアの方はどう?」

「この衣装、手が使えません!」


……あっそ。


「まったくドジよねえあんたって。わたくしみたいに役に立つ衣装を選びなさいよ」


言うマルチナは、ムカデの着ぐるみ。


「多けりゃいいってもんじゃないでしょ!」

「あー……(クラゲ)」


ガウリイはなんかクラゲの衣装でフラフラしてるだけだし……まともに探してんのはあたしとゼルとゼロスくらいね。

ノウンも「目が痛い」とか言って部屋の隅で手荷物漁ってるし。


「っだ――もーどいつもこいつも、やる気あんのかしら!」

「この格好で何言っても説得力ないぞ」

「あ〜ぁ……せめてお目当ての人形に、なんか目印でもあればいいのに」

『ほぉう?何か特別なお人形でもお探しですか?』

「あー、でもこう数が多いと何が何だかぜーんぜん……えっ!?」


あまりに自然に会話に入ってきたから気付くのが遅れたけど。

突如として降ってきた声は、形を伴ってあたしたちの目の前に現れた!

青白く少しこけた顔の男は、ピエロの格好をし、肩に小さな人形を乗せている。


「本日はアンとジョーの人形塔にようこそ。……ご覧、アン。久しぶりのお客様だよ」


アン……ってことは、こいつが言い伝えの……って!


「そんな馬鹿な、アレって何百年も昔の話でしょ!?普通の人間が生きていられるわけないじゃない!」


男は喉の奥でクククと笑い、


「もし、その言い伝えに出てくる男が、娘を手に入れるために……魔族の力を得ようとしたら?」


まさか……!


「魔族と合体した!?」

「クレアバイブルの力を利用してか!」

「そう!あなた方もクレアバイブルを探しに来たのですね?これは、面白いことになってきたわね……アン」


いちいち人形に話しかける気味の悪い男の力か、正面の扉がひとりでに動く。


「いいでしょう。もしあなたたちが私の用意した四つの関門を突破し、塔の最上階にたどり着くことができたら、ご希望の品を進呈します」

「なんだと!?おい待て!」

「ただし、お題は高くつきますよ……」


――それは、あなたたちの命……


声とともに、男は空間を渡って消えた。
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