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□第八章
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「あんな無能に何ができる。いいからどけ。そいつだって、苦しいからここに来たと言っていただろう。苦しいのがそんなに嫌なら、楽にしてやろうとしているだけだ」
話は一方的で、収束する気配がない。
一触即発の空気が場を支配した、その時。
「おいお前ら!よくも置いてってくれたな!!」
勢いよく玄関が開けられ、涙目になった紅葉が転がり込んできた。
「「!」」
二人の意識が一瞬逸れ――その隙に男が窓から外に飛び出した。
下に植木でもあったのか、バキバキという音が聞こえ、次いで走り去る足音が聞こえる。
「しまった!」
白銀が即座に追おうとするのを、青葉がしがみついて止めた。
「待ってってば!」
「放せノロマ!」
そのままガツガツと頭を槍の後ろで殴られる青葉となぜか必死な白銀。
そんな二人を見て、無視されたのかとさらに抗議の声を上げる紅葉。
「なんだよ二人してイチャイチャしやがって!俺がどんな思いでここまで来たと思ってんだ!モンスターから隠れるためにわざわざ自分で埋まったりしたんだからな!いい武器持ってるお前らにはわからねえかもしんねえけどさ!」
「暁そういうのはいいから白銀を止めてよ」
「そういうのってなんだよ!死ぬ思いしたっつってんだろ!少しでいいから同情くらいしてくれよ!」
『あらぁ〜暁さんってばお仲間さんから放置プレイ食らってますね〜いい気味』
「チャイナ手前帰ったとき覚えてろよ!!」
ナビゲートしていたらしいチャイナが画面越しに紅葉を煽る。
そのまま暴言大会を始める彼らを前に、青葉は白銀から力が抜けるのを感じ、そろそろと離れる。
彼女の表情は紅葉への呆れの色に染まっており、先刻までの鬼の形相はなくなっている。
青葉と白銀の視線に、紅葉が文句を垂れながら携帯をしまう。
「おうおう二人とも、俺に何か言うことあんだろ、なあ」
「バカらしい」
「暁、うるさい」
「ちっがうだろ『お疲れ』とか『ありがとう』とかだよなんで貶されなきゃいけねえんだよ!!」
騒ぐ紅葉に争い自体が空しくなったのだろう、白銀は青葉をややにらみつつ武器をしまった。
青葉は場が収まったことを紅葉に心の中で感謝しつつ、改めて白銀に向き直る。
「白銀、今回はどうしたんだ?どうしてあの人を殺そうとしたんだ?」
その言葉が冷や水となったようで、紅葉が目を丸くして黙った。
白銀もばつが悪そうに顔をしかめて黙っていたが、やがてゆっくりと口を開く。
「……今まで、お前らにああいうやつらを任せてきた。お前らは間違っていない。私も元の世界に返したいとは思ってる。……だが、今回はダメだ。あいつはどうあがいたところで死ぬしかない」
「え、なんでだよ?」
唯一事情を知らない紅葉に、青葉がようやく説明をする。