儚くも美しいモノ。

□第二桜
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―沖田side―



「ひとめぼれ…」



そんな言葉が僕の頭の中をよぎっていた。

隣に居るこの子…
のことを?
そんなわけない。

そう思っているはずなのに…どうして顔がこんなに熱いんだろう。

月が真上に来た頃に屯所についた。



「着いたよ。」
『ありがとうございます!』



心から嬉しそうにしてる。
むかつくなー土方さんに会えるからって…。



「君は一体…」
『はい?』



“土方さんの何?”



そう言いかけて、口をつぐんだ。

気まずい空気が流れるなかで、屯所からよく見知った人が出てきた。



「近藤さん…」
「おお。原田くんたちが探していたよ。」
「本当ですか…。にしても、どうしたんですか?」



見た感じじゃ誰かを探していたみたいだけど…
僕じゃないだろうし。

僕が口を開こうとしたと同時に近藤さんは視線を少しずらし、驚きの声をあげた。



「ああ、それは……君はトシの!」
『…まさか、あの近藤さん?』



知り合い…なのかな?
まったく話の見えない僕。

それを知ってか知らずか近藤さんは話を進めていた。



「トシに会いに来たんだったね。…あれ、トシと一緒に来ていないのかね?」
「僕と来たんですよ。散歩してたら見つけちゃって。」



土方さんは迎えにいったきり、帰ってきていないらしい。
…入れ違いだね。

あの土方さんが迎えにいくなんて…
―そんなに大切な子なのかな?



「…とりあえず、中に入りませんか?話は中でも…良いですよね?」
「そうだね。」



彼女が少し寒いのか震えていた。

だから入ろうとしたんだけど…僕…なんだかおかしいね…。

まぁいいか。

僕は少し戸惑いつつも、彼女の手を握った。



「そういえば…君の名前は?」
『あ…萌愛です。』
「萌愛ちゃんか…。」



僕は少し微笑み、萌愛ちゃんを中へと連れていった。
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