儚くも美しいモノ。

□第三桜
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広間には昨日見た人たちが集まっていた。



「改めて紹介する。
俺の妹の、萌愛だ。
訳あって一緒に過ごす、悪いがよろしく頼む。」


お兄様に目で合図され、慌ててお辞儀をする。

ぱっと顔を上げると可愛い女の子と目が合った。


『はじめてまして、かな。』
「あ、あの、雪村千鶴と言います。よろしくお願いします。」


千鶴様につられて頭を下げた。

それと同時にお兄様が不機嫌そうに


「俺の小性だ。...訳は萌愛には言えない。」


と言った。
何か特別なわけがあるのかな、と思いながら、はい、と小さく頷いた。

見るからに千鶴様は怯えていたから、何も言うことはできなかった。


「まーでも、千鶴もよかったな!」


明るい声が気まずい空気を壊してくれた。

平助様の声。


「女一人は心細かっただろ!萌愛が来てよかったな!」


平助様の言葉に千鶴様は照れながら頷いた。


「副長」
「あぁ、なんだ、斎藤。」
「彼女の処遇はどうするのですか。」


一様はちらっと萌愛の方を見た。


(私の処遇...?)


「そうだね。僕らはよくても、山南さん辺りが何を言うかわからないしね。」


総司様の言葉にお兄様は何か考え込んでる。


「俺の小性にしてもいいぜ?」
「お、俺も俺も」
「ちょ、待って!左之さんか新八っつぁんたちおじさんの小性なんて萌愛が可哀想だって!」


ここは俺の、と平助様が何か言いかけたところでお兄様が睨み、三人は黙ってしまった。
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