夢桜

□01
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許さない


赦さない


ユルサナイ


あの男を、絶対に――


*夢桜01*


文久三年十二月

―ワイワイガヤガヤ…

活気溢れる京の町。

笠を深く被り通りを歩く。

高いところで結んだ長い黒髪が歩く度に揺れる。


「…やっとここまで来た」


呟いた言葉は風に消えた。

1人端を歩いていると、男の声が聞こえてきた。


「おい、そこの小僧」


振り返ると三人の浪士が誰かに絡んでいるらしかった。

周りの人は遠巻きに見ながら誰も止めようとしない。
内心舌打ちをしながら騒ぎの中心に向かう。


「ガキのくせに、いいもん持ってんじゃねえか」

「小僧には過ぎたもんだろ?」

「寄越せ。国のために俺たちが使ってやる」


浪士3人が絡んでいたのは1人の男の子。


「(いや、女の子…?)」


何故女の子が男装しているのか。
疑問に思ったが、今はそれどころではない。

女の子は腰の小太刀に触れながら相手の隙をうかがっているようだった。
しかし見た感じ彼女は実戦を知らない素人だろう。相手は大の男が3人。


私は彼女に背を向けるように間に入る。


「あ?何だ小僧」


相手が怯んだ瞬間、懐から素早く煙玉を取り出し地面に向かって投げつける。


「くそっ前が見えねぇ!」

「やりやがったなクソガキ!!」


男の罵声を無視し後ろを振り返り女の子の手首を着物越しに掴む。


「えっ」

「今のうちに逃げるぞ」

「あっ…はい!!」

「――あ!?おい、待ちやがれ小僧共!」


後ろから聞こえた声をまたも無視し、私たちは走り続けた。




***
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