文(現パロ)

□空9(小政+α)
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“政宗、元気にしていますか?冬になって風邪を引いたりしていませんか、同居の片倉さんとは仲良く過ごしていますか?今週末に私だけ日本に戻る予定がありますので政宗に会えることを楽しみに、母より”

政宗がパソコンを前にフリーズを起こしていた。
いや、ギャグではなく。
何事かと隣から覗いてみるとメールが開かれていて、中には母親が来るという内容が書かれていた。

「義姫様は…いつも会ってくれないんじゃなかったのか?」
「…う、ん」

政宗が小さな頃から晩年近くまでの母親との確執を思い出したのはつい最近のこと。
俺としては晩年に和解していたことは嬉しかったのだが、それまでが強烈でにわかに信じられなかったと言うのが本音だ。
タイムリーすぎてどうしたらいいのかわからないらしい政宗は不安げに俺を見上げてきた。
「小十郎も一緒に来てくれるよな?」
「まあ、あの人が俺を許すならな」
俺と義姫様は犬猿の仲だったような記憶がある。
俺としては政宗をまっすぐ見てほしいと言う願いだけだったため、現実を見ようとしなかった彼女については好きではなかったが、どうやら今世の彼女は向き合う気があるらしい。
まあ、メールをしている時点でそれほど嫌っているわけではないのだから何か理由があるのだろう。

そういえば、政宗が今世で右目を失った理由を聞いていなかった。

「政宗」
「俺が片目を失った理由、聞きたい?」
「!」
こうも心が重なるとドキリとするが、政宗も理由を話していなかったと思い至ったようで、聞きたいと頷いた俺に父親から聞いた話だと前置きをして話し出した。



小さな頃、政宗はやはり凄く元気な子供だったそうだ。
そして、将来跡継ぎとなるように昔と同じく色々な習い事を輝宗様の意向で受けていたらしい。
まあ、そこまでは同じ、義姫様の溺愛っぷりも同じ。
話を聞いていて、やはり政宗が小さな頃から傍にいたかったと小十郎がしみじみ思っていると、そこまで軽く小さな頃の話をして、政宗は一息置いて俯いた。

「母さんが」
「?」
「母さんが弟と遊んでやっているときに何かの拍子で飛んできた玩具が刺さったらしいんだ」
「…!」

小十郎の絶句が雰囲気に気まずさを巻き起こす。
政宗もそれを感じたらしく、ほのかに動揺しているらしい小十郎の手を握って続けた。

その時の事は良く覚えていない。
気づいたら母親の自分を呼ぶ悲鳴のような声が聞こえて、激痛で混乱してしまった自分の目の前には慌てた様子の父親がいた。そして救急車が呼ばれてその日のうちに手術を受けた。
むろん義眼を入れることも話されたがそこで自分は今の眼帯をつけるほうを迷わず選んだらしい。

「で、予想はつくだろうけど、母さんは多分罪悪感に耐えられなくて俺のことを見ていられなくなったんだと思う」
「…それはそうだろうが…傍にいられなくなるってのは彼女らしい所だな」
「まあそうだな、でも前世みたいに退けるようなことはなくて、最初は手紙をよこすたびに謝ったり、手紙と一緒に写真とか色々な玩具を送ってきてくれてたんだよな、俺としては…傍にいて欲しかったけど前にも言ったように心の中には小十郎がいたから平気だった」

言いながら引き出しからアルバムを出した政宗は義姫の写真を指差す。
こうしてみると母親似だということがよくわかる。
彼女の周りに写る周りの兄弟もそのままだ。

「今週末かあ…母さんに会えるんだ…」
「良かったな、政宗」

そういって満面の笑みを浮かべた政宗を見下ろして小十郎も微笑む。
嬉しそうにアルバムを抱きしめている政宗は幸せに満ちていた。

ああ、あの時もこうならば良かったのにと心底思った。




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