文(現パロ)

□空7(小政)
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『おはようございます政宗様』


夢の内容は覚えてないけれどその声で目が覚めた。
目の前には微笑みを浮かべた小十郎が居る。
ドキリと胸が鳴ったが、政宗はそれを隠す様に口を尖らした。
「…寝顔見てたのかよ」
「ええ、見てました」
「あ、敬語!まさかさっき政宗様って言ったか?」
「ごめん…たまには許してくれ」
「…たまにはな」
小十郎が様を付けたい理由はよくわかる。
それだけを想って生きてきたと昨日寝入ってしまう前に話していた。

貴方に会いたくて、会いたくて。
焦がれていた。
漸くお会い出来たこの幸せを噛みしめたい、だからたまの敬語はお許しください。

胸が鼓動を速める。

言葉の全てが何か愛の告白みたいで恥ずかしい。

「…起きなきゃ遅刻だぞ政宗」
「うん」
優しく促されて政宗は頷くが、身体を起こす前に鼻をついた匂いに目を丸くした。
「あ」
「気持ち良さそうに寝ていたからな、朝は俺が作った」
「小十郎もしっかり料理作れるようになったんだ」
「一人暮らしも長かったからな」
「楽しみだ!」
「期待をしないように」
少し照れくさそうにそういった小十郎に笑みが漏れる。
食事を楽しみに上機嫌で顔を洗いに行った政宗を見送り、小十郎はにやける顔を抑えられずにいた。


朝起きたら隣に居た政宗を見て、夢ではないと再確認して思わず抱きしめた。
幸せすぎて、出そうになった涙すら嬉しかった。
傍に居られるそれだけで今は満足だ。

小十郎は洗面所から戻ってきた政宗と目があって笑う。

そうだ、今は、傍にいられるだけでいい。

小十郎はそう思い、自分の心を押し殺したのだった。


***

学校まで送ると言った小十郎と話をしながら政宗は校門までたどり着く。
校門を前にして、政宗は不安げに小十郎を振り返った。
「…なあ、終わったら迎えに来てくれるか?」
「勿論だ、元就と話してからにはなるとは思うが」
「…元就先輩のところに戻るのか?」
「ええと…それはまた後で」
元就の名前を出すといきなり政宗の顔が曇った。

昨日は再会できたことの興奮で考えてなかったようだが、良く考えたら元就の方が自分より早く俺に出会っていて、その上一緒に暮らしているという事実に気が付いたのだろう、俺が元就の所に居るのがつまらないというような反応だ。

つまりこれはヤキモチなのだろう。

嬉しい反応に苦笑いをしつつ、別れるのが嫌だという政宗を宥めながらそのネクタイを直していると後ろに気配を感じて振り返る。





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