恋海二次小説[2]

□あなたとシエスタ
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船に乗ったのなんて、このシリウス船が初めてな私は、正直最初の頃は船酔いで苦しむこともあったのだけれど。



それが今では不思議、波の揺れを背中に心地よく感じて、こうして甲板に転がって空を眺めるのがお気に入りになっている。



目の前に広がる空は、故郷のヤマトにも繋がってるんだなあなんて、当然の事が、なんだか不思議だ。



そんな事を考えていたら、いつの間にかまどろんでいたらしい。



気がつくと、背中には甲板の床とは違う、柔らかい感触。



見慣れた天井に、嗅ぎ慣れた香の匂い。



そして、寄り添ってもらえると安心する、その体温。



「あれ?」



「お目覚めか」



聞きなれた、低音が混じって響くシンさんの声に、自分が部屋のベッドの上にいるのに気がつく。



隣に、シンさんが肘をついて、私を覗きこむように寝転がっていた。



「もしかして、シンさんが運んでくれたんですか?」



きっと、この俺に手間をかけさせやがってとか、怒られるんだろうな。



何故なら、シンさんの目が、ご機嫌斜めそうだから。



こういう時に続くのは、多分なにかのお説教や叱責だ。



「覚えてないのか」



やっぱり声にも、不機嫌がこもってる。



「すみません」



できるだけ神妙に謝る私に、シンさんが何やら憂うような溜息をついて見せた。



なんだろう。



「お前、運んでる途中、俺にしがみついてきた」



「そうなんですか?」



私寝ぼけてたんだな、それを他の皆に見とがめられて、からかわれたりしたのかな。



彼が眉を顰める原因を思いめぐらしてみる。



でも、シンさんの続けたのは、私が想像してたのとは違った。



「俺だったからいいが、他の奴だったら」

「へ?」

よく聞こえなくて、正確にはシンさんの言わんとしてることがつかめなくて、もう一度と伺ってみた。



「なんでもない」



ふいと顔をそらしたシンさんは、なぜだか気まずそうに。



でも、その頬が少し照れてるみたいに見えたのは気のせいかな。



「甲板で寝るくらいなら、ちゃんと部屋で寝ておけ」



ポンポンと、シンさんがあやすように、私にかけてくれた毛布を優しくたたく。



「シンさんも、一緒に?」



「調子にのるな」




素っ気ない言葉だけれど、声音も瞳も優しくて。



もう眠くなんてなかったのだけれど、シンさんと一緒にいれるひと時が心地よくて、私はうっとり瞼を閉じた。






「無防備なのは、俺の前だけにしろ」








タイトルは配布元:love is a moment
さんよりお借りしました。


『可愛い恋で五題』より。







 

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