恋海二次小説[2]

□薔薇よりも宝石よりも一等星よりも
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切なげな溜息を盛大につきながら、船縁にもたれて、遠い目で海を見つめる我らがリカー号の船長。

ファジーは、やれやれとその後ろ姿を見て肩をすくめた。

「全く、気の毒だねえ」

晴れて思いを通じあえた恋人と、今はぶっちゃけ遠距離恋愛状態。

ロイがリュウガに勝つ日が来るまで、それは続くらしいが。

「問答無用で、攫ってくればいいのに」

そんな姉であるファジーのつぶやきに、ドジー。

「男なら、正々堂々と奪いたいんだろ」

まったく、男ってもんはと、ファジーは肩をすくめる。

「女ってのはねえ、男が思ってるほど簡単でもないし、難しくもないんだよ」

クリスマスに、ロイが恋人と一緒に過ごせてそれはうかれていたのをファジーは思い返す。

自分の妹分みたいな彼女は、素直で明るくてまっすぐで、ロイが恋い慕うのがよくわかる。

「あの子が、この船に来てくれたら、ずっと楽しいだろうねえ」

今でも、ロイの決闘に便乗して迎合を楽しんではいるのだけれども。

思わずファジーがつぶやくと。

「船長に、奮闘してもらうしかないな」

ドジーも、淡々とした口調でうなづくように言った。


いつものごとく、シリウス船にリュウガを探して乗り込んだロイ。

駆け寄ってきてくれた恋人を、愛しげな瞳で見あげる。

「今日は8分か、少しは伸びたな」

シンが嫌みな口調でくくっと笑って、本日ロイがリュウガに倒された時間を揶揄するのが聞こえた。

「大丈夫ですか?」

心配そうに見てくる彼女に、ロイはこれもまた常になっている膝枕をねだる。

くすっと笑って言うとおりにしてくれるのが、ロイには今でもまるで夢のように嬉しすぎる。

素直に見せてくれる彼女の笑顔がなにより嬉しい。

この笑顔を向けてもらうためなら、なんでもするとロイは心に誓って言う。

「お前のためなら、船を薔薇の花で埋めたっていい」

「それは、掃除が大変じゃ…」

なんとも現実的な難を告げられて、それならと更にロイは続ける。

「じゃあ、宝石はどうだ。どんな至高のお宝でも、お前のためなら俺は…」

「宝石なら、もう貰いましたよ」

大切にしてますと、ロイが作ったペンダントのレアクリスタルを見せてくれる。

それでも、ロイはただただ睦言を受け入れてもらいたい一心で、更に続ける。

「お前が笑って喜んでくれるなら、この空で一番輝く星だって捧げたいんだよ」

自分の膝に頭を預けて、そんなことを言ってくるロイに、だだっこをあやすような顔をして。

「じゃあ、お願いごと言ってもいいですか?」

「何でも言ってくれ!」

「また、一緒に街を歩いて、一緒にお菓子を食べたりしてほしいです」

ロイを見下ろす恋人は、とっても嬉しそうに微笑んでいてくれて。

あまりにも可愛いその頼みごとに、ロイはいっそう恋心を募らせられ、その心は彼女に陥落してしまうのだった。



「好きになった相手に、そんなこと言われたらたまらないだろう!!」




タイトルは配布元:love is a moment さんよりお借りしました。

『可愛い恋で五題』より。







 

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