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一番の変な敵は?
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シンさんから、私がこの船に乗ってから変なことばっかり起こるなって言われた事がある。

でも、世界中を駆け巡る海賊なんだから、色んな事に遭遇してるんじゃないかなって思ったので、シンさんに聞いてみた。

お爺ちゃんが、私が小さいときからよく聞かせてくれてた世界中の伝説や冒険の物語。

それには、大きなイカの化け物や、七つの頭を持った大蛇や、人を惑わす歌声の人魚の話とかもあった。

そんな風に変な敵とかに遭遇した事とかはないんですかって、私が来る前のシリウスの皆の…私の知らない、シンさんの遭遇した冒険譚が聞いてみたくて。

出会った敵を倒すシンさんって、かっこいいだろうなあって。

ウキウキと想像して聞いてみたんだけど。

シンさんは、そんな私の目をじっと見てくる。

その…、シンさんに俺の女になれって言ってもらってからは、二人きりの時に見せてくれる、シンさんの両方の瞳。

部屋のランプの揺れる灯に照らされて映える、光に濡れて艶塗るような黒曜石の瞳と、そしてもう一つの異なる色が澄んで輝く虹彩、シンさんの双眸は、どんな宝石の光よりも綺麗で気高くて、私の全部が吸い込まれそう。

思わず見惚れてしまっていたら、シンさんが意味ありげにニヤって笑った。

「そうだな。今まで遭遇した中で、一番変な敵は」一端ここで言葉を切ってから、シンさんが続けた言葉は。

「いつの間にか樽にいたお前だな」って。

そのシンさんの言いように、私は当然異議を唱えてしまう。

「わ、私!?私が、な、なんでシンさんの敵?!」

私は、なにがあってもシンさんの敵になんかならないのに!

「ひどい、シンさん」

思わず非難の目でシンさんを見返してしまう。

だって、あんまりだよ。

大好きな人の、敵になんてなりたくない。

鼻白んでしまった私を、シンさんが、とっても優しい目で見つめてきてる。

私の事、敵だなんて言ったのにシンさん…。

なんで、そんなに優しく守ってくれるように、見つめてきてくれるの?

シンさんの優しい瞳にくるまれてしまうような気分に、私はなる。

理屈じゃなくて、シンさんといると私の全てが満たされて。

それが、どういう事なのかわからないの。

ナギさんに、シンさんのどこが好きなのかって聞かれた時も。

自分の細胞の全てがシンさんを好きって叫ぶんです…なんて。

聞いた人はきっと、訳がわからないような事しか言えなかった。

でも、本当にその位私はシンさんが好きで、好きで、たまらないの。

シンさんに会えて、本当に良かったって、思うの。

大好き、シンさん。

シンさんが、私の事を恋や愛で好きじゃなくなっても、私は絶対シンさんの味方でいるからって。

その位に、シンさんの事が好きなのに。

敵なんて、ひどいよ。

恨めしくシンさんを見上げれば。

なんだか、意外にも困ったようなシンさんの顔。

「お前、少しは言葉の裏を勘繰れ」って。

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