過去拍手掲載物

キスをどうぞ、お姫様
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「ん…っ、ふ…ぅっ」

自分の口から洩れてしまった吐息に私の頬はまた熱を増してしまう。

このバルコニーでワルツを教えてくれているシンさんなのだけど、足を踏むたびに罰としてキスをすると言った通りに私はされてしまっていて。

踊り始めてから何度されたかわからないシンさんのキス、からめられた舌先から伝わる痺れは頭までぼうっとさせてきている。

こんな状態じゃ、足もすっかり覚束なくて、ただでもたどたどしいのに、もうまるで夢の中みたいに自分の思う通りに動けない。

「ふっ。また踏んだな」

「っ…だ、だって…」

愉しげにシンさんの目が微笑んで、また近づいてくる。

触れる度に、段々深さと激しさが増していってるように思えるのだけど。

「んぅ…ふ…あ…っ…」

零れる息も熱を増していくみたいで、頭の中だけじゃない、もう指の先までシンさんのキスに痺れてしまって小さな震えが走る。

ぴったり押し付けられているシンさんの身体には、私のうるさいくらいに鳴っている心臓の音も伝わっているに違いない。

「こんなに反応されると、止められなくなりそうだな」

ちゅっと湿った音をたてて唇を離したシンさんが、私の震える手をぎゅっと握って囁く。

「シ、シンさん?」

「ほら、足がとまってるぞ」

「う…」

からかうみたいな含み笑いとともに、シンさんが私の耳元に口を寄せてくる。

なんだか、シンさんの息も熱い。

耳元をくすぐるシンさんの吐息さえも、私の中にくすぐったい痺れを広げていく。

「今夜は、ベッドの中で思う存分踊らさせてやる」

ワルツの音も私の耳には届いてこない、耳に触れてくるシンさんの甘い声だけしかもう聞こえてこなかった。
 

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