恋海二次小説[1]

□閉じこめたい
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「あっつ〜」

風呂からあがって、脱衣所で〇〇は火照った頬を手で仰ぐ。
南の海域に来ているのもあるが、今日は殊更に暑い一日だった。
汗を流してさっぱりしたものの、なかなかその暑さからは解放されない。

なにか冷たいものを飲みたいと思った〇〇は、入浴後用に持ってきた着替えを身につけて
そのまま厨房に向かう。

ナギがいなければ、勝手に冷蔵庫を開けられないので
調理用に置いてある水でも飲むしかないのだが、それでも乾いた喉をうるおしたいと厨房の扉を開ける。

すると幸いにナギがいた。

「あ、良かったナギさん…」

〇〇がナギに喜んで駆け寄ろうとすると、〇〇の姿を見て驚いたナギがそれを思わず制してしまう。

「来るなっ…」

「ええっ!?」

予想もしなかったナギの一言に〇〇は驚いて立ち止まる。
なにか、ナギの機嫌を損ねるような事をしただろうかと気遣わしげな表情になった〇〇にナギは慌てる。

「いや…今、その揚げ物してっからよ…」

「わあ、揚げ茄子ですか。今から作ってるってことは南蛮漬けとかマリネとかですか?」

ナギの下手な言い訳に納得したらしい〇〇が「美味しそう〜」と小さな鼻をくんくんとさせる。

いつものように可愛らしい仔犬のような仕草だが…ナギの目に映る今の〇〇の姿は。
湯上りだと見てとれる、ほんのり上気した白い肌にしっとりと濡れた髪が妙に艶っぽい。
風呂上りに着替えたその姿は、薄いタンクトップにショートパンツという無防備すぎるいでたちで。
すらりと伸びたきれいな足、いつもは見ることのない彼女の白い太ももの柔らかそうな曲線がたまらない。
しかも、タンクトップの下には下着をつけていないのが一目でわかってしまった。
柔らかいふくらみとその頂の蕾の形がうっすらとタンクトップ越しにも見てとれる。

こんな姿で近くに寄られたら…自分がなにをしてしまうかわからない。

ナギは動揺を隠しながら〇〇に尋ねる。

「どうした?」

「ええっと、なにか冷たいものが飲みたいなあと思って」

ナギが表面上はいつも通りのぶっきらぼうな声音で何が飲みたいのか〇〇に聞く。
オレンジジュースと答えた〇〇に、冷蔵庫から出したジュースを氷を入れたコップに注いで渡そうとする。

…が、当然そうなると〇〇がコップを受け取るためにナギに近寄ってきてしまうわけで。

自然と〇〇を見降ろす形になったナギの視線の先には、タンクトップから見えてしまった彼女の胸のふくらみ。

「…っ!!」

ナギが狼狽して〇〇から、身を離す。

「きゃっ?」

そのはずみで、コップの中身がいくらかこぼれて〇〇にかかってしまう。

「悪いっ!」

慌てて、手近にあったナプキンで〇〇にかかったジュースを拭いてやるナギだが。
その場所が極めて微妙で…〇〇の胸元だった。
ナギの手に伝わる、その柔らかい感触。

…やべぇ

そうナギが息をのんだ瞬間。
厨房の扉が開いた。

「あ、シンさん。」

いつも通りの明るい声で、〇〇が扉の前に立っているシンに振りかえって声をかける。

シンの現れたそのタイミングは絶妙で。
助かったようなそうじゃないような…微妙にうす暗い気持ちでナギは無言でシンを見る。

当然だが、シンの不機嫌な目が二人に注がれている。

それに気が付いていない〇〇は、コップにかろうじて残っていたジュースを暢気にこくこくと飲んでいる。

「お前、風呂に行ったきりでどんだけ時間がかかってるんだ」

シンが不機嫌さを隠さない声で〇〇に問いかける。

「喉がかわいちゃったので…」

「お前、脱衣所に服やらが、置きっぱなしなんだよ」

まさかのぼせて倒れてでもいるのかと、シンが伺った脱衣所には
入浴前に着ていた〇〇の服と、当然下着も置かれたままだった。

「ああっ!すみません忘れてました、すぐに片づけます!!あ、コップ…」

「いい、俺が洗っておいてやる」

ナギが〇〇のコップを受け取ってやると、「すみませんっ」とパタパタと〇〇が厨房から駆け出て行く。

「…シン」

ナギが声を発したのに、シンが面白くなさそうなままの目を向ける。

「〇〇を、一人でうろちょろさせるな」

理不尽な訴えだろうとナギも思うが、つい言わずにいられなかった。

「俺だって、させたくない」

現実問題として、四六時中ずっと傍にいると言うわけにもいかないもので。
シンがため息まじりに言うのに、ナギもつられてため息をついてしまった。

End
 

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