恋海二次小説[1]
□Trick or Treat【シン×主人公】
1ページ/3ページ
その日寄港した街で、いつものごとく酒場ではシリウスの船員達が集まっていた。
「なんだか、不思議な格好をした人がいっぱいですね」
〇〇がオレンジと黒に飾られた店内をきょろきょろと見回す。
「ハロウィンのイベントをしてるみたいだね」
ソウシが壁に張られた店のポスターを示してくれる。
「ハロウィン?」
ヤマトでは聞きなれないそのイベントの名を〇〇が尋ねる。
「収穫祭みたいなものかな?お化けの仮装をしたりする風習があるそうだよ」
ソウシが簡単に説明してくれるのを聞きながら、改めて店内の客達を見ると確かに皆ドラキュラやら魔女やらの仮装をしている。
「へえー希望者には仮装衣装貸し出してくれるってよ」
「面白そうですね」
ハヤテとトワが好奇心いっぱいで店のポスターを見て乗り気になっている。
「いいねえ。〇〇、あたいらも仮装してみようよ」
ファジーが誘ってくるのに、〇〇も知らない行事に参加してみたくなる。
「そうですね」
他の人達はどうするのだろうかと視線を向けると、ハヤテとトワ以外は全くその気はないらしい。
…シンさんの仮装見てみたかったかも
〇〇がちらりとシンを伺い見たのに気がついたらしい。
「おい、まさかこの俺に奇天烈な格好をさせたいなんて思ってやしないだろうな」
今思っていたこと見透かす様な鋭い目で睨まれて、〇〇は慌てふためく。
「そっ、そんなことは…ファジーさん!早く行ってみましょう!!」
衣装の貸し出しをしているブースめがけて、〇〇がファジーと共に逃げるように駆けて行く。
「おい、〇〇……チッ」
シンが小さく舌打ちをしたのに、リュウガが面白そうな目になる。
「シンは本当に過保護だな。片時も〇〇を離したくないか」
「…あいつが面倒事に巻きこまれないか気がかりなだけです」
リュウガのからかいにも表情を変えることなくシンは当たり障りのない言葉を返す。
「ファジーもいるんだし、大丈夫だろう」
リュウガの言葉に今度はナギが〇〇の向かった方向に視線を向かせながら言う。
「…そのファジーと二人で、ストリップ小屋に売られたんじゃないですか」
「おいおい、ナギまで…」
リュウガはなんなんだお前らそんな心配性キャラだったかよと内心驚く。
「女の子二人なんだから、物騒なのには違いないんですから。船長が鷹揚過ぎるんですよ」
あのファジーを当然のように女の子の範疇に入れるソウシは矢張り究極のたらしだ。