♪過去の拍手小話♪

□ローとペンギンのほのぼの
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ロー達の船は嵐の去った静かな海に浮上した。

「みんな無事か!?シャチ!船の破損状況を報告しろ!」

「船は大きな損害なしです船長!怪我人は数名いますが命に別条なしです」

「そうか・・・怪我人は俺に付いて来い!無事な奴等は船の修繕に当たれ!!」

「アイアイサー」


潜水艦で航海している彼らが、なぜ嵐の害を被ったのかというと・・・
航海士であるペンギンが、体調不良ゆえに判断ミスを犯したからだ。

彼は、高熱ゆえに気候の僅かな変化を読み違えてしまい、おかげで潜水艦は荒れた海にしばらく翻弄される事となった。


ローは、嵐の途中で意識が保てなくなり床に倒れてしまっていたペンギンを抱き抱え、怪我を負った仲間達と医務室に向かう。

ペンギンをベットに寝かせて、怪我人達を手当てする。みんな軽傷で良かったとローは安堵した。
そして、ペンギンを心配する彼らを追い出し、氷枕と濡れタオルを準備して、彼の頭にセットしてやった。

苦しそうだった表情は、冷やされた事で和らいだ。ベット横に椅子を置き、ドンと腰を据え、額に浮かぶ汗を拭いてやる。

ふと、ペンギンは目を覚ました。

「すいません船長・・・俺のせいでみんなを・・・船長を危険な目に」

掠れ声で謝罪を入れる。

「いいさ、誰にでもミスはある。それより、体調が悪いならなぜ言わなかった?そっちの方が問題だ」
ローは少し怒りを含んだ声でたしなめた。

「すみません・・・心配かけたくなくて」

「馬鹿!お前はこの船の唯一の航海士なんだぞ?」

「はい・・・」

熱のせいなのか、思う所あったのか、ペンギンの瞳が潤む。

すっとローの表情が柔らかくなり、ペンギンの額に手を当て優しく声を掛ける。

「お前が居るから、俺たちは前に進めるんだ。もっと自分の事も大事にしろ。俺にも、仲間にもたまには甘えろ。あんま心配かけさせんなよ・・・俺たちにはお前が必要なんだ」

「・・・船長」

潤んでいた瞳がさらに潤む。

「もうしゃべるな。ゆっくり休め」

ローは、雫がこぼれそうなペンギンの瞳にそっと手を当て、そっと閉じさせた。

「ありがとうございます、船長」


俺は、この人の航海士で本当に良かった・・・
ペンギンは、体は辛いが、幸福感に満たされながら再び眠りの世界へと落ちて行った。


<END>

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