♪過去の拍手小話♪

□信頼
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ペンギンは、険しい顔でずっと海図を眺めていた。

浮上して何も見えない海を進み続け、もう軽く3日は経っている。充電はとっくに完了していて、そろそろ潜水したいのだがペンギンのGoサインが出ない。

なぜなら、手に入れた海図の信憑性が彼の中で疑われたからだ。本当にこのとおりに進んでいいのか・・・ペンギンの航海士としての勘は警鐘を鳴らしていた。
全てが誤りではない・・・しかし全てが正しい気がしない。果たしてこの海流はこの位置なのか?
波の立ち方、船の揺れ方・・・この感じだと僅かに海図からずれたところに激しい海流がある気がするのだ。
でも、もし勘が外れていたら、仲間を危険に晒す事になる。
決心がつかなかった。


思案するペンギンの元にローがやってきた。その手にはコーヒーカップが二つ・・・
ペンギンの前にそっとコーヒーを置く。
ペンギンは礼を述べ、コーヒーを一口飲み溜め息をついた。ローはそんなペンギンに喝を入れる。

「何を迷っている。自分を信じろ!」

「船長・・・しかしもし俺が間違っていたら大変な事になります。それに海図は正規のルートで仕入れたものだ・・・今回は、ちょっと自信ないです」

「自信がないならなぜ海図どおり進まない?・・・それはお前の中で警鐘がなっているからじゃないのか?」

真っ直ぐな瞳でローはペンギンを見る。その目には強い光が宿っていた。ペンギンは吸い寄せられるようにローの目を見て言葉を飲み込んだ。
固まっているペンギンにローは言い放った。

「俺はお前を信じる!海図はガイドラインだ。俺たちの航海が海図を塗り替える。新しい海図を生み出すのはお前だペンギン!間違っていたとしてもお前の航海術を持ってすれば、どんなピンチも乗り越えられる・・・そうだろう?」

そしていつものようにニヤリと笑う。

ペンギンはその言葉で決心がついた。


彼らは、ペンギンの思うままに進んで行った。
それは正しかった。

彼らが再認識した事・・・それは、常識の通じないこの海において、一番信頼できるのは感覚・・・
そして何よりも仲間に対する信頼こそが生死を分けるという真実

〈End〉

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