白ひげの航海の記録(更新停止中)

□イゾウの任侠道(お小遣い稼ぎ2)
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白ひげ海賊団が寄港した賑やかで繁栄した大きな都市。

ここでも16番隊隊長イゾウは、懐を温めるための非道な作戦を実行しようとしていた。

着物のみならず、他にも手に入れたいものが色々あった。海賊なのだから力で奪っても良いのかもしれないが、オヤジは民間人に迷惑をかける事をよしとしない。海賊の仕事場は海であって陸ではない。山賊とは違うのだ。


早めに夕食を済ませたイゾウは、歯を磨いて軽くシャワーを浴びると隊長室に籠って念入りに化粧を始めた。
そして男ウケのよい香水をふって、気に入りの女着物を丁寧に着込んで街へと出かける。


イゾウの今回のターゲットはたむろするチンピラではない。もう少し金を持っている中年男だ。よって、向かう先はホテル街・・・
彼が辿り着く頃には、すでに先客があちらこちらに立っていた。彼女達のテリトリーに入らないよう、少し離れた所で獲物を待つ。
思いの他早く獲物は掛かった。ただ、なんとなく拍子抜けしてしまった。なぜならその人物が女を買うような人間に見えなかったからだ。しかし、自分を買おうと言うのだからまぁいいだろう。誘われるがままホテルの一室に入る。
その男は、ベットに腰掛けてイゾウに隣りに座るように勧めた。言われた通りゆっくり彼の横に腰掛ける。しばらく黙っていたその男は、重たい口を開いた。

「似ている・・・」

イゾウの頭にはてなマークが浮かぶ。

“自分の死に別れた伴侶だとか、生き別れになった恋人だとかそんなありがちな物語みたいな事を言うのではあるまいな”
と、思考を巡らせていると思わぬ事を彼は口にした。

「あんた、白ひげ海賊団とこの隊長さんじゃないか?」

いきなり正体がバレると思ってなかったイゾウは言葉を詰まらせた。否定すれば良かったのかもしれないが、なぜかそれが出来なかった。

「まぁ、違うならいいよ。あんた美人だし・・・本気で買われるつもりなら買うよ。あまり気がすすまないがね」

動揺が隠せなかったイゾウは、少し落ち着いて頭を整理した。どうやら彼は、自分が白ひげ海賊団である事を見抜いたうえで声をかけて来たのだ。その真意が気になった。

「よく分かったな。まさか正体がバレると思わなかった。男と分かっててあえて声をかけるなんてあなたそっちの人?」

男は即座に否定した。

「いいや、私に男を抱く趣味はないよ。いくら美人でもね」
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