あいうえお順に進む46のお話達

□嘘
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嘘ついてもいつかはバレる・・・
母親はよくそんな事言ってたな。だが、それは正しい―――



「キャプテンなんで僕達に嘘ついたの?」

俺は黙って目の前で悲しそうな顔をしているベポを見つめた。別に仲間を傷つけるつもりなんてなかった。知らない方が良い事もある・・・そう思ったから・・・俺はベポの後ろに並ぶ船員たちに目を向けた。みな複雑な顔だ。
何故母親は“嘘をつくな”と言ったのか、それは“信用を失うから”。
海賊は汚い嘘つきだ。それが当たり前・・・騙し合いが人生の型。嘘つきは泥棒の始まり、海賊とは奪略者。
だがしかし、その理論は主に敵同士に限る。皆で力を合わせなければ海を渡る事は出来ない。信用のおけない者同士が、逃げ場のない海の上で衣食住を共にするなどおぞましい事だ。俺は溜め息をついて重い口を開いた。

「悪かった。だが、本当の事知ったら皆が傷つく。知らない方が良い事もあるだろう?」

シャチがためらいがちにゆっくり答えた。

「確かにそうかもしれない。でも、俺たちは真実を知りたいんです。傷つく事になっても・・・それに、独りで抱え込まないでください」

ローは目を丸くする。ペンギンがシャチに続いた。

「シャチの言うとおりです。俺たちは船長と全てを分かち合いたいと思っているのに・・・楽しい事や嬉しい事だけじゃなくて、苦しみや悲しみも・・・俺たちは船長の何ですか?仲間じゃないんですか?俺たちの事信用出来ないんですか?アイツみたいに裏切ると?」

ローの目がさらに見開かれ、そして切なげに伏せられた。

「知ってたのか」

その口から発せられた言葉は弱々しくてやっと聞き取れるものだった。シャチが答える。

「いいえ、あくまでも予想です。だから真実を知りたいんです。俺たちの中では色々な憶測が飛び交っています。話してください船長」

ローはうつむいた。ローは皆を守りたくて嘘をついた。でもそれは間違っていた。


昨日立ち寄った島で船員の一人、ダンテが唐突に姿を消した。皆で探しに行こうとしたらローが止めた。
“アイツはこの島で運命の出会いと思われる様な女に会って海賊業から足を洗った”と・・・
皆驚いた。女好きな奴ではあったが挨拶もなしに船を降りるなど考えられなかったからだ。しかし、ローはその後すぐに船を出させた。まるで何かから逃げる様に・・・
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