あいうえお順に進む46のお話達

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ワノ国に滞在していた白ひげ海賊団に事件が起こった。親父が娘を迎え入れたというのだ。本日の午後の出港に合わせて乗船して来るという。
船員達は信じられない気持ちで一杯だった。そりゃ親父は差別や偏見を持ったりしない出来た人だし、自分達は女を乗せると災いが起こるという話を信じちゃいない。しかし、女がいては色々やりにくい。チラッとその新入りと親父が話しているのを見たという者の話だと、飛び切りの上玉らしい。嬉しい気持ちも当然あるのだが、扱いに困る。皆で頭を抱えた。

瞬く間に時が経ち、ついに出港の時を迎えた。噂の新入りが船に現れる。
スラリとした細身に華やかな着物をまとい、ワノ国の人間ならではのキメこまやかな透けるように白い肌。美しい顔立ちに紅が眩しい噂通りの上玉だ。皆で息を飲む。マルコが隣りで固まるサッチに釘をさした。

「サッチ・・・お前手ェ出すなよい?」

「お前こそ・・・」

サッチはマルコの方を見る事もせず、新入りをジッと眺めたまま言葉を返した。マルコはポリポリ頭を掻いて“困ったねい”と呟いた。あんなイイ女を前にお預けをくらうなんて男所帯にはかなり酷な話だ。しかし、仲間に手を出すなど御法度もいいところで・・・

固まる息子達を白ひげはさも楽しそうに眺めると、新入りに自己紹介を促した。

「グララララ・・・さぁこれからお前の家族となる野郎共だ。自己紹介しなぁ」

新入りは大きく息を吐くと、鈴が鳴った様な声・・・ではなくそれはそれは渋い声で自己紹介を始めた。

「俺はイゾウ・・・これから世話になる。よろしく頼む」

あまりの衝撃に皆開いた口が塞がらない。白ひげはそんな息子達を見て大笑いした。

「グララララ!やっぱりなぁ〜お前らコイツを女だと思ってたろう?グララララ!確かに見てくれは娘だがイゾウはれっきとした息子だァ!」

マルコはそんな親父に不服を申し立てた。

「親父!わかってて黙ってたねい?!ヒドイよい!」

「まぁいいじゃねぇかァ〜。それよりマルコ、船内を案内してやってくれ」

「わ、わかったよい。イゾウ行こうか?俺はマルコ、よろしく頼むよい」

気を取り直したマルコは、簡単に自己紹介してイゾウを連れて回った。ワノ国の人間は控え目らしく、船内をまわる際彼はあまりしゃべらなかった。
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