あいうえお順に進む46のお話達

□風邪
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朝目覚めた時からなんとなく体が重い。しかも先ほどから鼻水が出る。鼻をかみつつローは心当たりを探した。
自分達は北の海出身だから比較的寒さには強い。最近忙しかったし、そもそも万年睡眠不足だから考えられる原因は免疫力低下といったところか・・・

「あ〜やべぇ寒気してきた」

ローは身震いしながら呟くと自室に向かった。取りあえず横になろうと思ったからだ。
部屋に着くと誰も入ってこぬよう小窓のカーテンを閉めた。周りに心配されるのも面倒臭い。
帽子をサイドボードに放ってベットに潜り込み、どうせ眠れはしないのだが取りあえず目を瞑ってみる。すると本格的に風邪の症状が出て来た。頭が痛いし、寒気がするのに熱っぽい。ローはさらにテンションが下がって溜め息を着くと、布団を深く被り直し丸くなった。
しばらくすると、連絡用パイプからシャチの声がした。

「業務連絡、充電のため浮上する!担当の者は持ち場へ速やかに移動せよ!他の者は万が一に備えて戦闘準備!!」

普段からローが操舵室にいない時は、シャチが取り仕切っているのだ。
ローは布団に入ったままその連絡を聞き流した。自分が出て行かなくてもある程度は仲間達がなんとかするだろうと思っているからだ。万が一強い敵にあたったなら、その時は出て行けばいい。

ゆっくり浮上する船の、体が浮き上がるような感覚を楽しみながらローは一つ寝返りをうった。
海面に飛び出し、波に揺られる振動が心地よい。それはまるで揺籠みたいでいつの間にか眠ってしまった。


何時間眠っていたのだろう・・・暗闇の中目を覚ます。ひどく汗をかいているし、喉もカラカラだ。重たい体をゆっくり起こし、とりあえず体にまとわりつく汗で湿りきった服を着替えた。汗だくな所を万が一誰かに見られでもしたら気取られてしまう。
フラフラと扉に向かい、そっと戸を開き外の様子を伺うと、ベポが通り過ぎていった。一瞬ドキッとしたが、こちらには気付かなかったらしい。ドアの隙間からスルッと抜け出し、出来るだけ平静を装いながら食堂に足を進める。
その少しの距離が、いつもよりなんとなく遠く感じる。ふらつく足を律しながらようやく食堂に足を踏み入れると、そこには誰もおらず、ホッと胸をなで下ろした。
そして、水をたっぷり飲んで溜め息を一つ・・・

「ふ〜・・・やれやれ」

額に滲んできた汗を拭ったところで人の気配に気付く。
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