あいうえお順に進む46のお話達

□狂気
1ページ/2ページ

ハートの海賊団船長、死の外科医トラファルガー・ロー
人を殺し、また生かすその医者の心は時に狂気に満たされる。


その日、出くわした敵船の人間を一人で全て始末してしまったローの笑みには底知れぬ恐ろしさがあった。
仲間達はその状態のローにあまり近付かない様に心掛けていた。どんなとばっちりをくらうやら分かったものではないからだ。下手すると殺されかねない。今彼の心には狂気にも似た殺意が渦巻き純粋に殺しを楽しんでいる。楽しそうにしている船長を見ている事は船員にとっては幸せな事だが、この場合はちょっと違うのだ。


シャチは敵船から奪った品々をリストにして、ローに報告にすべく彼の部屋を訪れた。

“船長・・・少しは落ち着いたかな〜なんかスイッチ入っちゃってたからな”

シャチは若干深刻な面持ちでノックする。しかし返事がない。小さな声で“失礼しまーす。入りますよ〜?”と声を掛け、恐る恐る部屋に足を踏み入れると、ベットに愛刀を抱いて座るローの姿があった。敵の返り血でドロドロのまま・・・
部屋中に血の臭いが充満している。

“あぁやっぱりなんかヤベェ”と思ったシャチはあえて戸を閉めず開け放したままにした。生臭い空気を入れ替えるため、またすぐに逃げられるように・・・

「船長、積み荷リスト出来ましたよ」

平然を装い、目を光らせる彼の前にリストを差し出す。サングラスをかけている意味なんてないくらい突き刺さる視線。
ジワッと背中に冷や汗が浮かぶのが分かる。シャチは少し後ずさった。

“ヤバい”と思ったのも束の間、瞬く間に床に激しく押し倒されひどく頭を打ったシャチの意識は朦朧とする。ローに声を掛けようとしたが、手で口を塞がれてしまったため叶わなかった。それでも一生懸命声をだそうとするも、くぐもった声しか出ない。

「ん〜!!んんん〜!!(船長)」

ローは薄い笑みを貼り付け、シャチの叫び声なんて聞こえていない様だ。口を塞いでいた手を退けてくれたと思いきやその手は首へと伸び、どこからそんなパワーが出て来るのかと思うほどの力できつく締められた。

「うぁ・・・」

喘いだのも束の間、ギシギシと首の骨が軋む音が耳に届き、全く息が出来ずこのままでは本当に折られるのではないかとシャチは思った。必死でローの手を退けようとするも、意識が段々遠ざかる。気を失いかけた瞬間ローが自分の名をよんだ気がした。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ