あいうえお順に進む46のお話達

□薬
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夏島を出て一週間ほどたったある日、ハートの海賊団を謎の病が襲った。熱病の一種らしく原因は不明・・・高熱を出した船員たちがバタバタ倒れて行く。
ローと船医は看病に追われた。感染力が強いようなので、患者を隔離し細心の注意を払い治療にあたる。医者が感染すれば全滅も有り得るからだ。睡眠時間を削り(ローはもともとあまり睡眠をとらないが)昼夜を問わずせっせと働いた。その甲斐あって死人は出ず、一月ほどでほぼ病騒動は終息した。
月の光が差し込む薄暗い医務室にはぐったりしたローと船医の姿があった。

「ふぅ〜やれやれ。慌ただしい一か月間だったな。あとはこの3人か」

ローはベットでスヤスヤ眠る船員たちに優しい目をむけながら、隣りでヨレヨレで座り込んでいる船医に疲れ切った言葉を投げ掛けた。船医も疲れた笑みで言葉を返す。

「そうですね、船長。彼らももうほぼ熱が下がってますからもう安心です。薬も最後の一個を使ってしまいましたから次の島で大量に買わないといけませんね」

「だな。すっからかんだぜ。傷薬くらいしかねぇよ」

2人で笑いあっていると、慌てた様子のペンギンが部屋に飛び込んできた。彼自身はかなり早い段階で病を発症したので、恐らく免疫がついてるだろうから、医務室は今のところ立ち入り禁止だったのだがローは彼を咎めなかった。

「何事だ?」

至って冷静に対応する。ペンギンは絞り出すように答えた。

「シャチが倒れました!熱病です・・・!!」

「何!?」

ローと船医は慌てて立ち上がった。もうカタがついたと思っていたのに・・・薬は先ほど使いきってしまった。

(元気だけが取り柄のアイツが?しかもこのタイミングでか!?)

ローは言葉を失った。
ペンギンに担架を担がせ、共にシャチのもとに急ぐ。勢いよく扉を開けると、布団に沈み込むシャチの姿があった。駆け寄って、汗ばんだ額に貼り付く髪をかきあげて様子を伺う。
いつもの明るく元気な姿は影を潜め、顔を蒸気させて荒く息をし、こちらの呼び掛けにも全く答えない。完全に熱病にかかっている。これ以上被害を拡大させるわけにはいかないので、取りあえずペンギンと一緒に担架でシャチを医務室に搬送した。ペンギンはもうかからないであろうが念には念を・・・ローはペンギンを医務室から追い出した。
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