あいうえお順に進む46のお話達
□声
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注)“腹心”の続きの設定です!!
「ペンギン・・・」
「ペンギン・・・」
俺の名を呼ぶのは誰だ?
その声が耳に心地よくて意識が覚醒し始めているものの、俺は目覚める気になれなかった。そう、俺は眠っている。
何故???夜だから?
違う・・・俺は死にかけたんだ。別に初めてじゃないけど・・・
あちこち痛む。誰かが痛む手を握っている。痛いけど人肌のぬくもりを包帯越しに感じ、その心地良さからまた夢の世界へと足を向けた。
どれほど時間が経ったのか。目を開けるのがおっくうだ。耳にまた心地よい声が聞こえてきた。
あぁ・・・船長だ。そうか・・・船長が俺を呼んでいたのか。
船長が俺を呼んでいる。
返事をしなきゃ!目は開けず、もごもごと口だけ動かす。
「はい・・・船長」
渇いた喉は思うように言葉が紡げず、掠れた小さな声しかでなかった。
それでもその言葉は彼の耳に届いた。
「ようやく気付いたか!心配かけさせやがって」
心なしか船長の声が弾んでいる。俺はゆっくり目を開けた。船長の笑顔が眼前に広がる。
「お帰りペン」
心地よい声が挨拶をくれる。俺も挨拶を返した。
「ただいま船長」
船長は俺の頭を、まるで子供に対するようにくしゃくしゃ撫でると呟いた。
「またお前の声が聞けてよかった」
声―――その音の羅列は時に大きな意味を持つ。
〈END〉