ハートの航海の記録

□ハートの海賊団のとある日常ー冬島編ー
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凍て付く海の底をゆっくり進む。

水温が低すぎて海王類の姿もない。
温かいココアやコーヒーで暖をとろうとするもあっという間に冷めてしまう。冬島出身の彼らは寒さはお手の物とはいえ、しばらく過ごしやすい気候に居たためか、寒さが身に染みる。

「寒いっすね〜酒の備蓄これからは少し増やしません?ココアじゃ暖まらないっす」

ペンギンがぼやく。ローは少し考えてから口を開いた。

「ん〜そうだなぁ。もう少し増やすかぁ〜。その分きっちり稼いで来てもらうぜ?」

「アイアイサー♪」

あっさりOKが出てペンギンは上機嫌だ。
この寒さでも平然としているベポにシャチはさも羨ましそうに言う。

「お前は毛皮着込んでるからいいよなぁ〜暖かそうで〜。凍死とは無縁だよな」

ベポは少し不服そうに言葉を返した。

「そんなことないよ!野生の白熊だって凍死しちゃうこともあるんだよ?特に小熊なんて日常茶飯事だよ。飢えと寒さでこの瞬間にもきっとあちこちで死んじゃってるよ!失礼しちゃうんだから」

「あぁ〜そりゃ悪かったな。そんなに怒るなよ」

むくれるベポに謝罪を入れて、シャチは、ジッと画面を眺めるペンギンに一声かける。

「なぁ、あとどのくらいで着くんだ?」

「そうだなぁ。もう島が見えるとこまでは来てるんだけどなぁ〜。砕氷が多くて浮上出来ないんだよなぁ〜。どうします?船長?」

「仕方ない、ギリギリまで海中を進もうか」

「アイアイサー」

およそ30分ほど経ち、ようやく浮上出来た。いつもなら浮上と同時に洗濯物係りが忙しくなるのだが、しかしこう寒くては洗濯物も干せない。あっという間にカチカチに凍ってしまうだろう。冬島の気候から抜けるまでお預けだ。寒くて汗もそんなにかかないから、まぁいいかとローは自分をなだめる。医者としては衛生面はできるだけキッチリしておきたいのだ。只でさえ、潜水艦は通気が悪くて環境が悪い。カビ対策には常に頭を抱える。

全員甲板に出て島を眺める。島は一面雪に覆われ山は吹雪いているようだ。その景色は何処となく故郷に似ていて、今のところ途中からメンバーになった人間はいないため、全員が無言で感慨深く島を眺める。

最初に口を開いたのは船長。静かな口調でいつもと変わらない停泊処置の指示を出す。
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