ハートの航海の記録

□★ 竜宮
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ハートのご一行は、深海をゆっくり航行していた。ログポースはなぜか、ずっと下を指していたので取りあえず潜ったのだ。海底に沈むと、針は真っ直ぐになり、落ち着いた。
海の中に島でもあるのだろうか・・・
彼らは、疑問を胸に船を進めた。時々、ユニークな顔をした魚達が窓を通り過ぎていく。

海底を進み、小一時間ほど経ったころ遠くに建造物が見え出した。

「船長、城みたいなもんが見えます!」

シャチが叫ぶ。眼前には、それはそれは美しい光り輝く大きな城が・・・
真っ暗だったはずの海が、真昼のように明るくなる。

「コイツはすげぇや」

ローの口許に笑みが浮かぶ。船はまるで吸い込まれるようにスピードをあげ、どんどん城に近付いていった。海流に乗って、瞬く間に城門をくぐり抜ける。どうやら次の島はあの城らしい・・・


ついに彼らの船は城の中へ到達した。急に流れが緩やかになる。
不思議な事に城の中には海水がないようで、前に進むうちに自然と船は海水上に頭を出した。普通の島のような入江に出て、彼らは取りあえず通常通り停泊措置を行った。肺に入って来る空気も地上と変わらない。地に降り立つと、足下にも頭上にも、ひとりでに輝く岩石が広がる。


「うわぁ〜スッゲー」

シャチが口をあんぐりさせて、頭上を見回す。他の船員も、感嘆の溜め息をもらしながら辺りをキョロキョロ見回している。
ジッと城の奥を見つめるローのパーカーの裾を、ベポがくいくいと引っ張った。

「ねぇキャプテン・・・なんだかすごく嫌な感じがするよ」

野性の勘が働くのか、ベポは何時になく落ち着かない様子だった。

「どうしたベポ?怖いのか?柄にもねぇ」

ローは怪訝な顔でベポを見た。

「なんだろう・・・なんだか背筋がゾッとするんだよね」

ベポはそう言うとガタガタ震え出した。ローは鋭い目で再び城の奥を見つめ呟く。

「フンッ・・・この先は十分気をつけた方が良さそうだな」

そして、ベポの肩をポンポンと叩くと

「お前は船に残ってろ」

と優しく促した。ベポはブンブンと首を振る。

「キャプテン、俺ついて行くよ!死んでも離れない!置いて行かないでよ!!」

「そんなに震えて何言ってる!本能の警鐘には従うもんだぜ?」

ローはニヤリと笑って歩き出した。だが、ベポは耳を貸す気がないらしく歩き出したローの後ろにぴったりついて行く。
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