ハートの航海の記録

□★ 桃源郷
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ハートの海賊団はいつもの如く深海を行く・・・
突如ログポースが海上を指したので浮上する。しかし、大きな水しぶきをあげて飛び出した先には島などなかった。

「どういうことだ?」

ローは眉間にシワを寄せながら、外に出てみた。どこまでも広がる水平線・・・
ローの横に立ったペンギンはログポースを眺めながら頭を抱えた。

「一体どういうことでしょうね?ログはまだ上を指しています」

ローの頭に一つの仮説が浮かんだが、即座に否定する自分がいた。なぜなら、それは伝説の島で実在するはずなどないと思っていたからだ。

「空島・・・」

ペンギンが静かに呟いた。自分が拒絶したその言葉は腹心の部下から出た。ローはハッとした・・・ワンピースを追う自分が空島を否定する事の矛盾に気付かされたからだ。
じっと、真っ直ぐなペンギンの目を見る。彼は黙ってローを見ていた。しばらく沈黙が流れたが、それを破ったのはローだった。

「俺は今までずっと空島はおとぎ話だと思っていた。お前は信じるか?空に浮かぶ島々を」

「俺も空想の産物だと思っていました。でもね船長・・・グランドラインを渡る航海士にとってログは自然の法則に逆らうこの海で唯一信じられるものです。コイツは壊れてる訳じゃない。笑われても構いません。信じる者が真実を手にする・・・俺はそう思いながら今までやってきました。まぁ、それ以上に船長を信じていますけどね」

ペンギンは真顔でそう返すと、目線を空へと移した。

「フン・・・そうか」

色々な感情が渦巻いてローは少し恥ずかしくなり、空にフイッと目線を移した。そこには雲以外何もなかった。
2人は黙って空を見つめた。周りに集まっていた他のクルー達もお互いに顔を見合わせて空を仰いだ。
海と同じく果てしなく広がる吸い込まれそうな青・・・

右も左もわからぬこの海を、ログを無視して航海するなど有り得ない。それは冒険の終わりを意味する。このままただの略奪者に成り下がる気などない。こうなれば、何としてでも空に飛ばねばならない。それに、伝説の島に皆興味があった。
ローは全員を食堂に集めた。なんとしても空に昇る手掛かりを探すためだ。船にある書物を全て食堂に持って来させて、まるで学生のごとく全員で調べまくった。
医者や航海士であるローとペンギンを除けば、彼らは勉強とは無縁だった。あくびを連発ししょぼつく目をこする。
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