☆財宝と献上物☆
□春うらら
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穏やかな風、暖かな日差し、気候は春・・・
先日まで、凪に見舞われ海底を進んでいたハートのご一行は、蓄電池の残量が僅かになり浮上した。
運のいい事に、凪は過ぎ去っておりさわやかな風が頬を撫でていく。
進むスピードは遅いが、充電しなくてはならない。どうせ、先を急いではいないのだ。彼らは、思い思いの1日を過ごす事にした。
バルトは機械いじりを・・・ペンギンはしばらく書けずにいた海図を、この機会に片付けてしまう事にした。
シャチは見張り当番なので、何をするでもなくぼーっと水平線を眺める。
暇だ・・・敵船はおろか、鳥の1羽も見当たらない。大きなあくびを一つして、ふと甲板に目を向ける。
数人の仲間たちが、気持ち良さそうに昼寝していた。
「いいなぁ〜俺も昼寝してぇ。早く交替の時間になんねぇかなぁ」
青い青い、雲一つない大空を見上げて不満を口にし、もう一度甲板に目を落とすと、ふわふわの塊が仰向けに倒れている。
それは、つなぎを洗濯中で真っ裸(?)のベポ。気持ち良さそうに昼寝中・・・。
「アイツってば、本当いいソファだよなぁ。いいなぁ〜くつろぎてぇ・・・まぁ船長の特等席だから俺たちは使えねぇからな」
シャチは首を振り残念そうに呟く。
そんなことを言ってると噂をすれば影、ローが本を片手に現れた。シャチが眺めていると、真っ直ぐその足はベポの方へ。
ベポを背もたれに、ローは本を読み始めた。
いつもの光景。
シャチは口許を緩め、再び海に視線を戻した。
数十分後・・・再びシャチは甲板に目を向けた。状況は全く変わっていない。
“船長もまだ本を読んでいる”と思った矢先、バサッと音を立てて本がローの顔に落ちた。シャチは驚いて身を乗り出す。
しかし、船長に見ている事がバレたらマズいと思い、慌てて身を隠しコッソリ見張り台から観察する。
どうやら船長は、眠気に襲われコックリコックリしていて、本を支える手から力が抜けたらしい。恥ずかしかったのか、キョロキョロと辺りを見回している。シャチは思わず、小さい笑いを漏らした。
“船長、可愛い所もあるじゃん”なんて思いながらさらに成り行きを見守る。