☆財宝と献上物☆
□それはささやかな幸せ
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白ひげは最近若い息子を船に迎えた。歳は10歳になる“ハルタ”という若者である。歳がいってから出来た子は可愛いと言うがまさにそのとおりで、贔屓するつもりはないのだが新入りというのもあって取り分け気にかけていた。
さわやかな午後、体調も良いので甲板に出てみると、ハルタがロープを束ねていたので後ろから声を掛けてみた。
「グラララ・・・調子はどうだハルタ?」
少年は急に頭上に降り注いた声に大して驚いた様子もなく振り返ると、明るい笑顔を白ひげに向けた。そして元気に答える。
「うん、頑張ってるよ!頼まれてたお仕事は全部終わっちゃった〜“他にすることなぁい?”って隊長さんに聞いたらね、もうお仕事ないんだって!だからね、散らばってたロープを片付けてるんだ〜」
頼まれてない事でも進んで行う働き者の息子に、白ひげは目を細めた。
「まだ子供なのにしっかりしてやがる。将来が楽しみだなぁ」
と褒めてやると、少年は少し照れくさそうに鼻の下をこすりながら笑った。
彼はもう今日の仕事は終わったと言ったので、白ひげは町に出る事を許可する事にした。心配もあるが彼はこう見えて腕が立つし、今寄港しているこの町は平和な土地だ。白ひげの家族に手を出す馬鹿はいないだろう。
そんな事を考えながら、白ひげはどこからか包みを出してきてハルタに渡した。
「オヤジさんありがと〜う」
ハルタは満面の笑みでそれを受け取ると、いそいそと開けた。包みの中には少額の硬貨が入っていた。
「グララララ・・・この町には菓子屋が多いんだァ。そいつで今日のおやつでも買ってこい」
白ひげは笑顔で提案を述べた。ハルタの顔がさらにパッと明るくなった。
「わーい!町に行ってもいいの?ありがとう」
「日が暮れる前にはちゃんと戻って来るんだぞ?」
「うん、わかった!行ってきまーす!」
ハルタは元気いっぱい返事をすると、喜びいさんで町へと駆けて行った。そんな孫とよんでも差し支えない息子の背中を、白ひげは笑顔で見送ったのだった。
空がオレンジに染まる頃、ハルタの元気な声がモビーに響いた。
「ただいま!オヤジさんはお部屋にいるのかな?」
きちんと言いつけ通り日が暮れる前に戻って来たハルタは、側にいたクルーに白ひげの居場所を尋ねた。