あいうえお順に進む46のお話達

□風邪
2ページ/3ページ

驚いて後ろを振り向くとそこには白くて大きな塊が・・・

「ベポ・・・どうしてここに?」

思わず漏れた不可思議な質問にベポが困った様な顔で返事を返してくる。

「ん〜別に深い意味はないよ?敵も現れなさそうだし〜いつも通りちょっと休憩・・・おやつの時間だし」

ローはハッとした。あまりの動揺に間抜けな質問をしてしまった事に気付いたからだ。食堂に誰もいない方が珍しいというのに・・・
しかもあまり時間を気にしていなかった。極力いつも通り、クールなトラファルガー・ローを演じてみせる。

「そ・・・そうだな。悪いな変な事言って・・・そういや冷蔵庫にゼリーがあるから食っていいぞ。俺はいらないからお前にやる」

ベポは笑顔でお礼を言うと、とてとて足音を響かせながら食堂の奥の冷蔵庫に駆けて行った。
ローはゼリーを餌にベポを遠ざける事に成功し、満足そうな笑みを浮かべると部屋に向かおうと足を踏み出した。
その瞬間世界がぐるりと反転する。緊張の糸が切れたからなのか・・・ローは何が起こったのか理解するのに時間を要した。

「俺・・・倒れてる?」

気付かなかったが、先ほどより熱が上がっていた。そして間が悪い事にベポが戻ってきてしまった。

「キャプテン!!大丈夫?なんか顔赤いよ?熱あるんじゃない?」

慌てて身を起こし否定しようとしたが、頭がクラクラして思わず肘をついてしまった。これでは全く言い訳出来ない。バレた相手はベポだ、シャチやペンギンと違って扱いやすい。ローはボンヤリしている頭をフル回転させて作戦を一気に組み立てた。周りにバレず、なんとかする方法を・・・

「ちょっと寝不足がたたってるだけだ。ゼリー食ったら腹をかせ!一眠りするから・・・」

ベポはあっさりローの言葉を信じた。

「いいよ!ゼリーのお礼・・・今日はちょっと涼しいからタオルケットのオマケつき!」

ベポのありがたい提案にローの顔に笑顔が浮かんだ。作戦成功・・・これで取りあえず今日1日誤魔化せる。ベポに風邪がうつらないか不安はあるが、まぁ大丈夫だろう。ベポが体調を崩した事など一度もない。


数十分後、柔らかな日が降り注ぐ甲板に、ベポの腹を枕にタオルケットにくるまるローの姿があった。珍しくスヤスヤ寝息をたてて・・・
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ