あいうえお順に進む46のお話達

□酒に頼らずとも
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ローは頭を降ってよみがえる夢魔を追い出し、酒を取りに行くべく立ち上がった。そこにドアを軽くノックする音が響いた。遠慮がちなベポの声が続く・・・

「キャプテン・・・いるんでしょ?」

ローは小さく返事をした。そして入ってくるよう促す。

「あぁ・・・入って来いよ」

こわごわと開けられた扉の向こうには不安に満ちたベポの顔があった。ローはベットに座り直し、ベポの言葉を待つ。彼はチラリと床に散乱する空瓶を見やると真っ直ぐローを見た。

「キャプテン、なんかあったの?・・・皆心配してるよ?」

ローは自嘲気味な笑みを浮かべて否定を述べた。嘘だという事はバレバレなのは分かっているが、素直になれなかった。

「キャプテン・・・俺たちは何のためにここにいるの?」

ローは寂しそうな声に伏せていた顔を上げた。ベポはそんなローを見つめて言葉を続ける。

「俺たちはキャプテンの力になりたいんだよ」

ローはまた顔を伏せて考えた。自分はなぜ素直になれないのか・・・支えてくれる者達がこんなにも傍にいるのに・・・
自問自答を繰り返していたら不意に悪夢が蘇って来た。目の前で苦しみながら絶命していく仲間達と、彼らを助けられない無力な自分・・・
涙が滲んで視界がぼやけた。ローは急に立ち上がると、黙ってベポに抱き付いた。
ベポは少し驚いたが、キャプテンが素直になってくれた事が、自分にすがってくれた事が嬉しくてローをゆっくり抱き締めた。微動だにしない彼を抱いたままベポは床に仰向けに転がった。薄暗い天井をしばらく眺める。大好きなローの体は軽かった。

「キャプテン・・・お酒もいいけどご飯も食べてね」

そっと声を掛けると、返事の代わりに自分を抱き締める腕に力がこもった。ベポは軽く溜め息をつく。しかし、ローは何とも言えない温かい気持ちが心に広がるのを感じていた。さっきまであんなに不安に押し潰されそうになっていたのに・・・今はこんなにも平安・・・ベポの胸に顔を埋めたままこっそり笑顔を浮かべた。自分を抱き締めてくれるベポのぬくもりが気持ち良くて、今まで全く顔を出さなかった眠気が頭をもたげだした。素直に眠気に身をゆだねる。

しばらくすると、ローから規則正しい寝息が聞こえて来た。ベポは満足げな笑みを浮かべ目を閉じる。

酒に頼らずとも、そこに仲間がいるから・・・
彼はもう夢魔を恐れない―――

〈END〉

あとがき

私ってやっぱり似た話多いですよねorz
そしてちょっと病んでいるローさんが好物(^_^;
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