ハートの航海の記録新世界編

□信頼
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「ということは少し危ない橋を渡る気なんですね・・・」

ローの目が少し見開かれる。ペンギンの声に怒りや不安の色はない。ペンギンは一口酒を飲み帽子の影からローを見た。鋭い腹心にフッと笑い、ローはその唇に笑みをたたえたまま答えた。

「まぁな・・・虎穴に入らずんば虎児を得ずだからな」

シャチが口を挟む。

「てことは重要な情報なんですね」

ローは不敵な笑みで答えた。

「その通り・・・」

ベポはずっとションボリしたまま彼らの会話を聞いていたが、急に目の色が変わった。そしてローの方をじっと見た。その目にはもう悲しみはない。ローはその視線に気付き、じっと彼の目を見た。強い確信のこもった目。大好きなキャプテンは、目的のために大きな一歩を踏み出そうとしている。彼を支えることが自分たちの務め・・・そのことに気付いたからだ。
そこにコトッという音が響く。シャチがテーブルにサングラスを置いた音だった。久々にみる彼の目は薄暗い部屋でらんらんと輝いて見える。ペンギンがまるで代表するかのように言葉を紡いだ。

「俺達は船長を信じます。船長の思うままにどうぞ行動してください。でもあまり無茶はしないでくださいね」

ローは少し嬉しそうに“あぁ”と答えた。そこにコップの酒を一気にあおったシャチから声がかかる。

「で?俺達が成すべきことはなんですか?船長の事だ・・・色々企んでるんでしょ?俺達に休暇はない」

ローは楽しそうに笑うと副船長に指示を伝えた。

「時が来たらこちらから連絡を入れる。それまで船を守れ。アレに関する情報も出来る限り集めろ・・・」

「アイアイサ〜」

ニヤリと笑ったシャチとペンギンが元気よく返事をする。さらに今まで一言も発する事がなかったベポも加わる。

「アイアイキャプテン!俺に任せてよ!!」

ローは彼らの顔をゆっくり見回し、酒を瓶からあおると今一度命令を口にした。

「時を待て!情報を集めろ・・・船を守れ。俺達は確実にワンピースに近づいている。全てを手にするのは俺達だ!!」

次の日の朝、ローは船を降りた。彼が何処に向かおうとしているのかは船員達には解らない。しかし彼らは船長であるローに対して全幅の信頼を置いており、ローもまた然り・・・
もう彼らに不安の色はない。あるのは船長に対する信頼の気持ちと、大きく動き出した自分達の未来に対する期待・・・
彼らの顔が朝日に輝く。


“真実が俺達を待っている。旗を掲げろ!全てを手にするのは俺達だ”
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