紅と蒼の伝説
□邂逅と物語の始まり
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フワァッ
「……―――」
風が穏やかに吹き抜けた。
それと同時に私の腰まであるポニーテールにした髪も風に掬い上げられて、靡く。
空を見上げると、茜雲がゆったりと流れていた。
その色は燃えているようで、どこか淋しさも感じさせる。
木々の茂る並木道。
私は今、人に貸していた「NARUTO−ナルト−」の最終巻を手に、その道を歩いていた。
人気の無い道。
感傷的になるのにはもってこいなのかも知れない。
漫画「NARUTO−ナルト−」は実に多くの人を死に至らしめた。
三代目火影、自来也、そしてうちはイタチ……敵も多く死んだけど、ナルトの大切な人たちも死んだ。
「はははっ、らしくないな……」
乾いた自嘲の笑いが漏れる。
たかだか漫画の世界の事なのに。
ただ、自分と重なるナルトやサスケの境遇に共感していただけなのに。
いつの間にか、彼らの一挙手一投足から目が離せなくなった。
彼らの、大切な人達を自分が守れたら……
フワアアァァッ
「……っ!!」
突風が急に背中を押した。
空が急に暗くなって見える。
突風は私を包むように吹き始め、だんだん眠くなってきて……普通に立っているはずなのに視界がだんだん地面の方に傾く。
……これはもしかしてと思い、地面に眼を向ける。
地面にぽっかりと漆黒の穴が開いて、膝から下がすでにその穴に飲み込まれていた。
そしてその現象は、現在進行形でどんどん進んでいるわけで。
「そんな、ちょ、嘘でしょーーーーーーッ!!!!!!」
その絶叫を最後に、私は漆黒に腕まで飲まれて意識は完全にブラックアウトせざろうえなくなった。